(差分)クロッカスとチューリップ
当たり前だけど、好奇心からネットで検索して見た大人よりもずっと幼い、自分とそう変わらないように見えた。
「なぁ、八田」
いつも下の名前で呼ぶと怒るくせに、たまに苗字で呼んでやると怯む。
「こっちは気になんねえの?」
手を解放したその指の背で股間を軽くノックした。
「お、おおおおぉい?!何してんだよテメェ!こっちってっ」
「あっれぇ?まさか自分で触ったこともねえのかよ」
「バッ、バカ!バカにすんじゃねえよ!?オナニーぐらいやってるっつうの」
一部小声。
「じゃあ他人の見たことは?」
「あああああるわけねえだろう変態かよっ」
「決めつけんなよ。AVだって男優のチンポ出てくんだろうが」
「そ、それは……」
「ああ、見たことないか。女苦手だもんな?」
「黙れよクソ猿!べべべつにそんなもん、そんな、俺だってなぁ?!」
「女も他人のチンポも平気だって?」
「あ、ああ!」
獲物は力強く頷いた。何が平気か理解しないまま。
「じゃあ毛だけじゃなくてソッチも確認するよな?」
「ああ!…………あ?」
「萎えてるとこ見てもしょうがねえからちゃんと勃てるんだぜ?」
「ちょ、待てよ!ギャッ!!」
ガタガタ言うのに構わず履物を膝上までずり下げた。正面からスカートめくりされた少女みたいに内股で股間を手で押さえているが、悲鳴は甲高くない。
「隠してんじゃねえよ」
無理に手を外させることはしない代わりに自分も履物を落とした。足首まで。お互い様っていう状況はさしずめ『北風と太陽』でいう太陽だ。
堂々とする俺に負けず嫌いが発動して性器を晒した。まじまじ見ても何とも思わなかった。
勃てろと言ったのは自分だけど、さすがに一人でしごき出すのには躊躇いがあって、代わりに美咲の股間を触ってみた。カエルが潰れたような声を上げて飛び退いたから一瞬だったけど。
「おおおおおおい、ホントにおおおおかしいんじゃねえの?こういうの……俺ら友達だし男同士だろ?!」
「だからだろ?遊びで触り合うぐらいよくある話だろうが」
「ンなの知らねえよ!」
「あるんだって。興味ねえの?」
即座に否定されることも考えたけど、されなかった。
「相手が男だろうと、他人の手って興奮するらしいぜ?」
好奇心は暴力的だ。俺たちの年頃なら尚更だ。興奮と気持ちいいことには逆らえない。
足元にまとわりついていたスウェットとパンツを捨ててベッドに乗り上がって見せた。音が聞こえそうにゆっくりと美咲の喉が動いて、無駄に慎重にベッドへ膝を乗せた。
作品名:(差分)クロッカスとチューリップ 作家名:3丁目