その手を取ってしまったから
「本来、君こそよっぽど酷い。マフィアのくせに、この僕を絡め取ったのは一体誰だというんです。沢田綱吉」
「え……?」
「悪い頭にはもっとわかりやすく言いましょうか。僕も君が好きだと言ってるんです。不本意ながら、君に好きにさせられた。……嘘だとか言ったら、殴りますよ?」
最後の一言で綱吉は『う』の形に開きかけていた口を慌てて閉じて、言葉を換えた。
「ど、どういうことだよ…!?」
「君があんまりにも馬鹿だから、放っておけなくなったんですよ」
「な……!?」
そうやって馬鹿にするくせに、骸は先ほどよりもはっきりと慈しむみたいな表情をしていた。
「君が好きです。馬鹿なところもひっくるめて」
「ば、馬鹿馬鹿って言い過ぎだろ!?」
「クフフ、本当じゃないですか。だから、僕が君のための力になります。君が足場を失っても、最後まで立っていられるように。―――そのためには僕が外にいることが第一条件なんです」
だから、僕を牢から出しなさい。沢田綱吉。
綱吉はもういっぱいいっぱいになりながら、いっそ正気を確認するみたいに骸に問いかけた。
「……お前、言ってることわかってる?」
「ええ」
「オレのために復讐者の牢を出たいって言ってるようなものだよ?今、ボンゴレは手一杯で、お前の背負うリスクだって小さくないのに……!」
「ええ。健気でしょう?」
「馬鹿だ」
「君に言われるのは不服ですが、そうかもしれませんね。でも、これに関してはより大きなリスクを背負いかけてる君もどっこいでしょう」
「う……」
「―――僕を出してくれますね?」
「出してやるよ、骸」
「待っていますよ、沢田綱吉。……いいえ、綱吉くん」
そうして降って来た柔らかい口づけが、今までの骸と違いすぎて、優しすぎて。
綱吉は唇が離れた途端、骸の顔が見れなくなってしまったのだった。
作品名:その手を取ってしまったから 作家名:加賀屋 藍(※撤退予定)