【カイハク】機械仕掛けの神
手入れされた花壇に身を屈め、花を摘み取っていく。
もくもくと手を動かしながら、ハクは村の伝承とカイトの言葉を思い返していた。
災いが起こるという言い伝えられているけれど、実際に何かあったという話は聞かない。本当に、誰一人、ただの一度も、森に足を踏み入れなかったのだろうか。レリクのことも、自分が言い出さなければ、誰も気づかなかったかも知れないのに。
彼が、そんな恐ろしいことをするとは思えない。言い伝え自体知らないようだったし。
でも、それなら何故マスターは・・・・・・。
ハクはぎゅっと目をつぶって、胸に沸き起こった疑問を振り払う。
遠くから雷鳴が聞こえて我に返り、急ぎ足で城に戻った。
ハクは手に持った花を差し、水を入れようと花瓶を持ち上げる。慎重に階段を下りようとしたその時、激しい雷鳴が響き渡った。
「きゃあっ!」
轟音と閃光に驚き、ハクは花瓶から手を離してしまう。あっと叫んだ時には、花瓶は粉々に砕けてしまった。
「お嬢さん! どうしましたかね!」
ホールからガルムが飛んでくる。ハクは慌てて制し、
「あ、気をつけて! 足を切ってしまうから! あ、あの、私、ごめんなさい、雷が鳴ってそれで」
おろおろと状況を説明していると、声を聞きつけたのかカイトもやってきた。
「凄い雷だったな」
「あっ、あの、ご、ごめんなさい!」
「旦那、お嬢さんはわざとやった訳じゃないんですよ」
カイトは二人と散らばる破片を見やり、
「さっきのは、花瓶が割れた音か」
「ごめんなさい、手が滑ってしまって」
「旦那、わざとじゃないんですよ。お嬢さんは良かれと思って」
ガルムの言葉に、カイトは首を傾げて、
「落としたら割れるのは当たり前だ。破片で怪我をする前に、片づけたほうがいい」
「あ、は、はいっ」
ハクが慌てて破片を拾おうとすると、カイトが「カラクリにやらせたほうがいい」と言う。
「ハクでは手を怪我する」
「・・・・・・・・・・・・」
冷静な視線に耐えられなくなり、ハクは身を翻して自室へと駆けていった。
作品名:【カイハク】機械仕掛けの神 作家名:シャオ