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【カイハク】機械仕掛けの神

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その夜、ハクはガルムがクッキーをかじりながら語る昔話に、耳を傾ける。

「あたしが旦那に拾われてから、もう十年になりますや。あの時は本当にねえ、いくらあたしでも、もう駄目だと思いましたよ」

行き倒れていた自分を助け、「ガルム」という名前をくれたのだと、懐かしそうに語った。

「随分大層な名前じゃないですか。でも、折角旦那がつけてくれたものですし、あたしには大切なんですよ」

ガルムは、ポリポリとクッキーをかじりながら、「本来の姿には、合ってるんですけどね」と続ける。

「でも、あたしはもう、誰かを傷つけるのが嫌なんですよ。ちっぽけで無力なネズミが、あたしにはお似合いの姿でさあ。それに、この体の方が何かと楽出来ますんで」

太った腹を揺すって笑うガルムに、ハクは、城に大量にあるカラクリ達のことを聞いた。

「私とは作りが違うようだけれど」
「ああ、あの子達は、この城に住んでた魔道士が作ったもので。今じゃもう、資料も残ってないような、古い時代の技術ですよ」
「カイトさんも?」
「そうですよ、お嬢さん。カラクリ達は、旦那を作る為の試作品。旦那が唯一の成功例でさあ」
「そう。そうだったの」
「旦那は、話し相手もいないこの城で、ずっと一人ぼっちだったんですよ。そのせいで、人付き合いの仕方が分かってないんです。許してやってください。あれでも、随分マシになったんで」

ガルムの言葉に、ハクは小さく笑う。
カイトの不思議な態度は、気の遠くなるような時間を孤独に費やしてきたからだろうかと考えた。