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【カイハク】機械仕掛けの神

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「お嬢さん、捜し物ですかい?」
「あっ、う、ううん。何が入ってるのかなと思って。使える物があるかもしれないし」

書斎らしき部屋で机の引き出しを覗いていたハクは、ガルムに声を掛けられ、慌てて立ち上がる。

「この城の魔道士は、片づけが下手だったみたいね」
「全くでさあ。大物は粗方片づけたんですけど、細かいところまで手が回らなくて。旦那はあの通りですし、あたし一人じゃ目が届きませんや」
「そうね。私も手伝うから」
「ありがとうございます。まあ、ぼちぼちでいいんですよ。必要な物は揃ってますから。じゃあ、失礼してあたしは掃除の続きを」

ガルムが太った体を揺すりながら部屋から出ていくと、ハクは残りの引き出しをかき回し、紙の束とペンとインク壷を見つけた。それらを掴むと、急いで自分の部屋へと向かう。


自室に戻ると、固まっていたインク壷に水を入れて溶かし、ペン先をつけて試し書きをしてみた。何とか書けそうなことにほっとして、ハクは背筋を伸ばして紙に向かう。


マスターの誤解を解いておかないと。


レリクとカイトの間にどのような話し合いがもたれたのか分からないが、何か誤解が生じたに違いないと、ハクは考えていた。
レリクは今頃、自分のことを心配しているだろう。一人では何かと不自由だろうから、新しい人形を作り、ともに暮らして欲しい。その一歩を踏み出させる為に、ハクが無事であること、城でカイト達と暮らしていくつもりであることを伝える必要があった。


きっとマスターも分かってくれる。
出来れば村を出て、新しい土地でやり直してくれたらいいのだけれど。


村人達は、レリクに冷ややかな視線を向けていることだろう。安住の地を求めて移り住んだはずなのに、このような結果になったことが、ハクには心苦しかった。


マスターには、どうか自分を責めず、幸せになって欲しいから。


何度か書き直した末、やっと満足のいく手紙を書き終えたハクは、丁寧に紙を折り、懐に入れる。


ホールの鏡を使えば、誰にも見られずにマスターの家に入れるから。すぐ森に戻れば、後はカイトさんが気づいてくれるはず。


事情を話していこうかとも考えたが、余計な心配を掛けてしまうのではないかと思い留まる。それに、一緒に付いていくと言われたら、余計困ったことになりそうだった。


私一人のほうがいい。
カイトさんには、後で謝っておこう。


叱られるかもしれないが、きちんと説明すれば分かってくれると、ハクは自分を納得させた。