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【カイハク】機械仕掛けの神

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ホールに出てきたハクは、鏡のそばにカイトがいることに気づき、足を止める。

「カイト、さん」
「ん、どうした?」
「あの、あ、な、何を見ているのかと思って」
「いや、何も。そうそう変わったことは起こらないようだ」

カイトが何を言っているのか分からなかったが、ハクはとにかく場をやり過ごそうと、

「に、庭に、出ています、から。あのっ、すぐ戻るので! 心配、しないで、ください」
「ああ」
「し、失礼、します」

あたふたとホールを横切り、玄関から庭に出ると見せかけて、扉の蔭に身を潜めた。
そっと様子を伺うと、カイトは再び鏡を眺めてから、首を傾げてその場を離れる。
ハクは、じりじりとカイトがいなくなるのを待ち、階段を上がって二階へと姿を消すのを確かめてから、小走りでホールを横切り、鏡へ向かった。

「落ちついて・・・・・・マスターの机に手紙を置いて、すぐ戻ればいいの」

小声で呟いてからのぞき込むと、懐かしい光景が広がる。家の中は書物が乱雑に散らばり、足の踏み場もないほどだった。レリクの姿がないを確かめてから、ハクは覚悟を決めて鏡へと身を沈めた。



目を開ければ、そこは間違いなくレリクの家の中で、乱雑に散らばった書物も、テーブルの上に出しっぱなしになっているカップも、何もかも懐かしい。
ハクは片づけたい衝動を押さえ込み、レリクが気づくよう祈って、テーブルの上に手紙を置いた。急いで出ようと振り向いたその時、目の前にレリクが現れた。

「きゃあ! あっ、マスター!」

ハクが自分の無事を告げるより早く、レリクがハクの肩をつかみ、

「ハク、でかした! お前のおかげで、城の場所がつかめたぞ!」
「えっ、えっ?」
「この時を待っていたのだ! あの鏡が使われる瞬間を! これで、あの人形は私の物だ」

唇を歪めて笑うレリクに、ハクは恐怖を覚える。

「えっ、マスター、あの、どういう・・・・・・」
「あの城だ! お前も見ただろう! あの城にいた人形! あいつは古代の技術で作られている。あいつを調べれば、多くの謎が解明するだろう。私は、古代魔道の権威になれる。都の魔道士どもの鼻を明かしてやるのだ!」
「えっ、マスター、そんな、あのっ、や、やめてください! 誤解なんです! カイトさんは、決してマスターが思っているような」
「カイト? そうか、あれはカイトというのか。分かった、お前は此処にいなさい。後は私一人でいい」
「待って! 待ってください! 本当に誤解なんです!」
「誤解?」
「きゃっ!」

痛みとともに髪を掴まれ、無理矢理顔を上げさせられた。
ぎらぎらしたレリクの目が、ハクの顔をのぞき込んでくる。

「何を言っているんだ? あいつがお前と作りが違うことくらい、愚鈍なお前でも分かるだろう? 私にはあの人形が必要なんだ。私が都に戻るには。あの人形、あいつさえ手に入れば」
「そんな・・・・・・マスター・・・・・・」
「あいつの部品を全て分解し、調べ上げ、研究してやろうと言うんだ。光栄だろう? 邪魔立てするんじゃない!」
「きゃあ!」

派手な音とともに頬を張られ、ハクは床に倒れ伏した。

「お前はもう用なしだ! 大人しくしてろ!」
「マスター!? やめて! 嫌!」

がむしゃらに抵抗するも引きずられ、ハクはレリクが開けた地下収納の階段下へと突き落とされる。

「きゃああああああ!!」

悲痛な叫びも、暗闇の中に吸い込まれて消えた。