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【カイハク】機械仕掛けの神

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「ちゃんと棚の上も忘れずにね。そうそう、いい子だ」

キリキリと歯車の軋んだ音を立て、カラクリ人形達がぎこちなく箒やハタキを動かしていく。その足下を縫うように、黒毛の大ネズミが床を駆けていった。

「ほら、隅に埃が残ってるよ。さあ、こっちもだ」

急ぎ足で駆け回る彼の上に、ふと影が差す。慌てた様子で飛びのいた一瞬後に、誰かの足が下ろされた。

「旦那!! あたしを踏み潰す気ですか!!」

キーキーと抗議の声を上げるネズミに、カイトは視線を向け、

「ガルム? どうかしたのか?」
「あたしを踏み潰すところだったんですよ!」

ガルムと呼ばれたネズミが再度抗議すると、カイトは「ああ」と納得したように声を出し、

「それは惜しかったな」
「旦那!! また言葉の使い方間違えてますよ!!」



ガルムがこの城に住むカイトに拾われて、十年になる。
森の中で深手を負って倒れていた魔物は、このまま死を迎える覚悟だった。彼が自分を助けたのは、ただの気まぐれかもしれない。けれど、この時から、魔物は名を捨て姿を変え、森の奥深くに隠れたこの城で、風変わりな城主に仕えることを誓ったのだ。



「さあさあ、掃除が終わったら、旦那と遊んであげますからね。今は向こうに行っててくださいよ」
「分かった」

カイトはそう言うと、ガルムの背を摘んで持ち上げる。

「ちょっ!? 旦那!?」

カイトは手を伸ばして、高い棚の上にガルムを乗せた。

「旦那!? 旦那!! 降ろしてくださいよ、旦那!!」
「大丈夫だ、飛び降りれば床に着く」
「旦那!! あたしが怪我したらどうすんですか!!」
「太ってるから、大丈夫だろう」
「太ってませんよ! 失礼な!! ちょっ、旦那!? 何処行くんですかおいふざけんな降ろせゴルァ!!」