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【カイハク】機械仕掛けの神

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家に戻り、ただ泣くことしか出来ないハクの耳に、村人達の叫ぶ声が届く。
曰く、「掟を破った魔道士が見つかった」と。
慌てて飛び出したハクは、遅れて駆けつける人々に混じって、村の入り口へと向かった。

倒れているレリクを囲むように、村人達が集っている。「森の呪いが降り懸かったのだ」と怯える人々は、誰も手を差し伸べようとしなかった。
ハクは人の輪をかき分け、レリクの体にすがりつく。

「マスター! 目を開けてください、マスター!」

声を上げながら体を揺すると、レリクは微かなうめき声を上げた。

「・・・・・・ハク?」
「マスター! ああ、良かった!」

起きようとするレリクの体を支えるハク。周囲の怒りを感じたのか、レリクは宥めるように手を上げた。

「すまない、まずは説明させて欲しい」
「ふざけるな! あんたは掟を破ったんだ!!」
「この村は終わりだ!! あんたのせいで!!」

そうだそうだと声を上げる村人達に、レリクは頭を振って、

「とにかく、説明させてくれ。私は」
「今更言い訳しても無駄だ! あんたは掟を破ったんだ!」

殺気立つ村人達に、レリクは首を竦める。

「だから、聞いて欲しい。この村を救う方法がある」
「ふざけるな! そんなことで誤魔化されないぞ!」
「まあ、待ちなさい」

今にも殴りかかってきそうな村人を、村長が押しとどめた。

「彼は掟を破った。だが、彼はまだ生きている。まずは話を聞こうじゃないか」
「ありがとう。感謝するよ」

ハクに支えられながら、レリクは立ち上がる。殺気だった村人達を、ゆっくりと見回し、

「まず、掟を破り森に侵入したことを謝ります。村の言い伝えを本気にせず、自分の研究を優先させてしまった。申し訳ない」
「ふざけるな! あんたのくだらない研究で」
「静かにしないか」

村長が押しとどめ、レリクに続けるよう促した。

「結論を言えば、伝承は本当だった。この森の奥深くに城があり、私はそこの城主と会った」

ざわめきと悲鳴が、人の輪から上がる。村人達が落ち着きを取り戻すのを待って、レリクは続けた。

「だが、彼は私が魔道士だということを知り、寛大にも、私の人形を差し出せば、この村に危害を加えないと約束してくれた」

その言葉に、人々から安堵の声が漏れる。
ただ一人、ハクだけが、レリクの言葉の意味が飲み込めず、ぼんやりと主人を見上げていた。

「あんたの人形・・・・・・そいつを差し出せばいいんだな?」
「そうだ。私の美しい人形が、彼の目に留まったのだ。この子を差し出せば、彼はこの村を守るとさえ言ってくれた」

全員の視線を受け、ハクはやっと自分の身に降り懸かった運命を悟る。

「えっ、あ、わ、私・・・・・・を・・・・・・?」
「そうだよ、ハク。私もお前を手放すのは辛い。しかし、拒否すれば村も私の命もない。分かってくれるね?」

ハクは、レリクから村人達へと視線を向けた。殺気に満ちた視線が突き刺さり、拒否すれば自分どころかレリクの身も危ないと理解する。
ハクは目に涙を貯めて、もう一度レリクを見た。彼女の主人は、優しく頷き髪を撫でてくる。

「ハク、すまない。私を許してくれ」

ハクは目を伏せ、小さく頷いた。何もかも手遅れなのだから。

「さよなら、ハク」

レリクの声を背に、ハクは森へと足を踏み入れた。