【カイハク】機械仕掛けの神
薄暗い森の中、時折聞こえる鳥の声と、ハクが下草を踏みしだく音が響く。葉が擦れる音にオドオドと振り返りながら、ハクは道無き道を歩いていった。
あの時、マスターが思いとどまってくれれば。
自分がもっと強く止めていれば。
涙を堪えながら、ハクは森の奥を目指す。もしやレリクが追いかけてくるかと後ろを気にするが、懐かしい姿は影も形も見えなかった。
一体、どれほど進めば良いのだろう。
もう、村がどの方向かすら分からない。
もしかしたら、自分はこのまま森をさまよい続け、いずれ朽ちていくのかもしれないという恐怖が胸に沸き起こり、ハクはその場にしゃがみ込んでしまう。
呪いの主でも誰でもいい!
誰か助けて!
このまま森をさまようなんて嫌!
「何をしている?」
待ち望んだはずの声に、しかしハクは悲鳴を上げて飛び上がった。声を掛けてきた男の手から逃げようと、全力で走り出すが、木の根に足を取られて派手に転倒してしまう。
「いった・・・・・・」
したたかに体を打ちつけ、ハクは痛みに体を縮こめた。
足音が近づいてきて、ハクのすぐ側で止まると、
「何をしているんだ?」
顔を上げれば、見知らぬ男がハクを見下ろしている。人ならざる相手に、この男が呪われた城主なのだと気づき、堪えていた涙が溢れだした。
「酷く痛むのか?」
泣き出したハクに戸惑ったのか、男は傍らに膝をつき、ハクの体に手を掛ける。
抵抗すれば、マスターや村に災いが降り懸かるだろう。ハクは観念して、男のなすがままに任せていた。
「・・・・・・仕方ないな」
男はハクの体を抱き上げると、空中に魔法陣を描く。青白く輝く円陣に、男は躊躇いなく身を沈めた。
作品名:【カイハク】機械仕掛けの神 作家名:シャオ