Wizard//Magica Wish −8−
「ハルトの奴、おせ~な~」
「佐倉杏子、あなたは一体何度そのセリフを言えば気が済むの?」
「きっとあともう少ししたら帰ってくるよ!それまでもうちょっと待ってよ?」
マミさんのマンションで私達はハルトくんの帰りを待っていた。けど、ここ最近は一つ、欠けていることがあった。さやかちゃんだ。
さやかちゃんは、今日も学校に来ないで休んでいた。
朝起きたときとお昼にメールをしても返事はこなかった。
最近、私達とは別に一人で使い魔と戦っているみたい。けど、一番心配なのは、ソウルジェムの穢れが溜まっているはず。グリーフシードだってそんなにないのに…大丈夫かな?
「ほむらちゃん、…もしもだよ?もし さやかちゃんのソウルジェムの穢れが溜まって、…その、魔女になっちゃったら、もう元のさやかちゃんには戻せないの?」
「無理ね。一度魔女化してしまえばもう望みはないわ…ただあるとすれば、操真 ハルトの魔法でソウルジェムをウィザードリングに変えてもらうか、最悪の場合は私達の手で彼女を楽にしてあげるしか方法は無いわ」
「ぬあぁぁぁ!!キュウベぇの野郎、今度会ったときはギッタギタにしてやる!!そんな大事なこと私達に黙っていたなんて!!」
「前も言ったけど、奴にそんなこと言っても無駄よ?奴らは感情を持たない地球外生命体…希望や願いを売って歩く悪魔よ」
「ほむら は知ってたのかよ!?なんで黙っていたんだ!!」
「逆に質問するわ。突然私があなたたちにこの事実を話したとき、あなたはこの事実を受け止められる?」
「っ!…そ、それは…」
「まず、敵か味方もわからない私の言葉に素直に聞くことなんてあるの?それに、事実を受け止められなくって、自暴自棄になるケースも見てきたことがあるわ」
ほむらちゃんの話を聞いた杏子ちゃんは珍しくしょんぼりとしてしまった。それは、私も同じだった。ほむらちゃんのことは疑ったりなんてしていない。けど、そんなこと突然言われたって理解しきれないし、信じたくない。
でも、なんで ほむらちゃんはそんなことを知っていたんだろう。
それは、ハルトくんも同じ。
…あれ、っていうことは、ハルトくんはこのことを解っていて、あえて訳を話さないで魔法少女達を襲っていたのかな。
「ハルトくんは、ソウルジェムの秘密を私達に知られないように魔法少女達を救っていたんじゃないかな?」
「まどか、それどういう意味だ?」
「だってね、杏子ちゃん。最初ハルトくんは私達に会うとき、何も理由もなくソウルジェムを指輪に変えていたって言ってたでしょ?でもハルトくんはソウルジェムがグリーフシードになって魔女を産むことを最初から知っていた。だからその事実を私達に知られないように一人でずっと戦っていたんじゃないかな…」
「ハルト…そうか、そうだよな。…ハルトは、私達を絶望させないため、あえて悪役を買っていたのか…そんなことも知らないであたしは…」
「けど、操真ハルトを完全に信じては駄目よ」
「ほむら!まだお前そんなこと言って…」
「これは警告よ?もしこれ以上、彼との距離を縮めてしまえば…あなた自身が絶望することになる…。さて、私はそろそろ帰らせてもらうわ」
ほむらちゃんは長い髪をなびかせながら帰る準備を始めた。今日は武器や弾薬の調達があるみたいだから早めに帰るみたい。
スクールバックを肩にぶら下げて何も言わずそのままマンションから出ていった。
「距離?一体なんのことだ?なぁまどか、お前はわかるか?」
「えっと…わかると言えば…わかるんだけどな」
「おぉ!どういう意味だ?教えてくれよ!!」
「えっとね…杏子ちゃんってさ、ハルトくんと一緒にいる時間多いよね?」
「まぁ、そうだな…で?」
「ハルトくんと一緒にいてさ、なんか不思議な感じになったりとかしない?」
「そうだな~、とりあえず落ち着くな!それに…一緒にいて飽きないし、それに楽しい!で?」
「あぅ…いや、やっぱり杏子ちゃんには早いかな?」
「?」
杏子ちゃんは頭を傾げて考えている。やっぱり、杏子ちゃんにはまだ恋とか早いのかな?ただ鈍感なだけなのかもしれないけど…。
それはともかく、ちょっと前と比べたら ほむらちゃんはハルトくんをあまり警戒しなくなったけど、あそこまでハルトくんを拒む理由って一体なんでだろう。
ほむらちゃんは、私達がしらないハルトくんを知っているのかな?
もっと、仲良くなって欲しいんだけどな…。
作品名:Wizard//Magica Wish −8− 作家名:a-o-w