機動戦士ガンダムRS 第15話 それぞれの孤独
しかしサイ二等兵たちは、納得できなかった。
「まあ俺だってスーパーコーディネイターを診るのなんて初めてなんであまり自信持って診断出来るわけじゃないけどとにかく俺達より遙かに身体機能は、高いんだからそう心配することはない」
「そんな」
サイ二等兵たちは、この医者がヤブ医者ではないかと疑い始めた。
「見た目は、同じに見えるんだろうが中身の性能は全然違うんだ。
俺達より遙かに力を持てる肉体と遥かに知識を得られる頭脳を持っているんだ」
医者の説明中もキラ少尉は、なおも苦しがっていた。
「死ぬような病気にはならないし抵抗力は、高い。
しかし撃たれれば死ぬし熱を出して寝込むこともあるがそういったリスクは、俺達より遙かに低いんだ。
彼が乗ってたコックピットの温度が何度になってたか聞いたか?」
医者がサイ二等兵たちに聞いた。
「いいえ」
サイ二等兵が答えた。
「ナチュラルや普通のコーディネーターだったらまず助からない」
医者の言葉を聞いてサイ二等兵たちは、黙り込んでしまった。
「だからこんな熱くらい騒ぐことは、ない」
医者が太鼓判を押した。
サイ二等兵たちは、それ以上何もいえなかった。
「フラガだ。
入るぞ」
医務室にフラガ少佐が入ってきた。
「どうかしたのか?」
医者の周りにサイ二等兵たちが集まっていたことにフラガ少佐は、不審に感じた。
「いえ別に。
今彼らにも話したんですが」
医者は、先サイ二等兵たちに説明したことをフラガ少佐にも説明した。
「性能がぜんぜん違うか」
サイ二等兵は、そうぼやいた。
キラ少尉は、なおも汗をかき苦しがっていた。
※
アークエンジェルのモビルスーツデッキではクルーゼ大佐、アスラン大尉、ニコル大尉とディアッカ大尉が機体の整備を行っていた。
しかしアスラン大尉は、どこか上の空状態だった。
「まだほとんど手付かずじゃないですか。
僕も手伝います」
心配したニコル大尉がアスラン大尉を手伝った。
「先軍医に聞いたんですがキラの症状は、それほど心配ないようですよ。
でもしばらくは、絶対安静らしいです」
それを聞いたアスラン大尉は、表情を曇らせた。
「イザークの傷の具合は、どうなんだ?」
アスラン大尉は、整備を行いながらそう聞いた。
本当は、キラの具合を詳しく聞きたかったが心配させまいとわざと話題を変えた。
「イザークなら大丈夫です。
先の戦闘でキラと共闘して死神と互角以上に戦って見せたのですから」
ニコル大尉は、アスラン大尉の思惑にはまりイザーク大尉のことを話した。
「そうだな」
アスラン大尉は、自分で振っといて上の空だったため返事に時間がかかった。
それを見てニコル大尉も一安心した。
「でも大丈夫なんでしょうか?」
しかしニコル大尉は、何かを心配していた。
「何が?」
アスラン大尉は、ニコル大尉が何を心配しているのかわからなかった。
「結局全機無事に地球に下りられましたけど死神もまた下りてきました。
まだ追撃してくるかもと考えると味方の勢力圏内でも安心できなくて」
ニコル大尉は、サオトメが近くにいるので安心できなかった。
「大丈夫さ。
この基地の司令官は、アンドリュー・バルトフェルド大佐さ。
戦場が沙漠であればバルトフェルド大佐が有利さ」
いくら死神でもバルトフェルド大佐の敷地内であればバルトフェルド大佐が有利だと力説した。
「そうですか。
そうですね」
ニコル大尉の表情が明るくなった。
しかしアスラン大尉は、心ここにあらずであった。
※
ドゴス・ギアでは、サオトメがマン・マシーンデッキにパイロットを集めていた。
「敵は、おそらく少数戦力でこちらの戦力評価を仕掛けてくる。
その少数戦力を迎撃するためこれから俺は、アル・ギザに行く」
パイロットたちに動揺が走った。
「なお敵は、レセップスの艦砲射撃攻撃を仕掛けてくる可能性ある。
シグマン」
「はい」
サオトメに呼ばれシグマン大尉が返事をした。
「お前がガンダムサイガーにのり迎撃しろ。
装備は、S型だ。
壊すなよ」
「了解」
シグマン大尉は、そう命令され敬礼した。
サオトメは、防寒装備に包みアル・ギザへジープで向かった。
アル・ギザへ着くとパイロットならびにブリッジ要員が敬礼し出迎えた。
「しばらの間お邪魔させてもらう」
サオトメそういって敬礼した。
※
夜が明けアークエンジェルの医務室では、キラ少尉が目を覚ました。
そこには、枕元にはトリィがいた。
「気がついた?」
フレイ二等兵は、備え付けのカーテンを開けた。
「フレイ」
キラは、起き上がろうとした。
「だめよ。
いきなりおきては」
しかしフレイ二等兵にとめられた。
「ここは?」
キラ少尉は、フレイ二等兵に質問した。
キラ少尉は、今自分がどこにいるのかわからなかった。
「艦の医務室よ。
あなたは、着艦した時にはもう意識がなかったっていうから覚えてないんでしょう」
フレイ二等兵が事の経緯を説明した。
そのときキラ少尉は、何かに気づいた。
「じゃあここは」
「地球よ。
アフリカにあるキンバライト基地近くに昨日の夜に下りたの」
キラ少尉は、アークエンジェルも沈まず自分も死んでいないので一安心した。
※
アークエンジェルのモビルスーツデッキでは、フラガ少佐がマードック曹長とともにスカイグラスパーの整備を行っていた。
この2機は、支給されただけで飛べる状況ではなかった。
そのため即戦力には、ならなかった。
「マニュアルは、昨夜見たけどなかなか楽しそうな機体だね。
しかしストライカーパックも付けられますということは、俺は宅配便か?」
その愚痴にマードック曹長が笑った。
メビウス・ゼロがメネラオスとともに消失したことでフラガ少佐の機体は、自動的にスカイグラスパーになった。
しかしもう1機が問題だった。
通常なら宇宙戦専用のシグーハイマニューバのパイロットのクルーゼ大佐がパイロットになるのだが彼の類まれな操縦技術ならそのまま大気圏内でも戦闘可能だろうと判断された。
そのためもう1機のパイロットは、未決定だった。
「大尉ならじゃなかった。
少佐ならどんなとこにもお届けできますよ」
マードック曹長は、フラガ少佐の技量からそう答えた。
「ハルバートン提督の計らいとは、いえこの状況で昇進してもな。
給料上がるのは、嬉しいけどいつ使える?」
フラガ少佐は、スカイグラスパーに近づきスカイグラスパーがいつになったら飛べるかを質問した。
「ガキ共は、野戦任官のようです。
坊主は、少尉のようです。
まあパイロットですから」
マードック曹長は、フラガ少佐からの質問には答えずキラたちの話題に移した。
それほど機体の状態は、悪かった。
「ああ。
その他もまとめて二等兵さ。
やれやれ」
フラガ少佐は、それがわかり移った話題に合わせた。
作品名:機動戦士ガンダムRS 第15話 それぞれの孤独 作家名:久世秀一