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Wizard//Magica Wish −9−

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私は思わず見とれてしまった。今、目の前にいる杏子は普段の杏子じゃない。…本当に、聖母のように美しい女性だった。

「この世に生きとし生ける物は、何故子孫を残し、種族を反映できるのか。その答えは全て『愛』だ。私達の祖先、最初はちっぽけな存在だった。そんな存在でも心に愛は存在した。私達の祖先は互いに愛し一つになった。1から2へ、その2はやがて10、10は100、100は1,000、1,000から10,000へ…私は、最初親父にこれを聞いた時、意味がさっぱりわからなかった。正直、今もよくわからない。けどな、ちょっとだけわかったことがある」

「な、なに?」

「どんな存在でも、何かを愛することは罪じゃないってことだよ」

「っ…」

「例え相手が動物だろうが、人間じゃなかろうが、どんな奴にも愛する権利は持っているってことさ。自分とは違う存在に愛してはいけないなんて、誰が決めたんだ?違うだろ、誰もそんなこと言っていないだろ…だからさ、さやか。お前はどうなんだ?」

希望の光が見えてきた。
窓から見える空に、既に雨雲は何処かへといってしまったらしい。
日光が私に照らされた。暖かい…この温もりは、久しぶりだ。

「私は…」

「正直になれ、さやか」

「さやかちゃん…」
「…美樹さやか」

「私は…っ!」


素直になって良いんだ。

魔法少女がなんだ。
人間がなんだ。

そんな壁、存在しなかった。

最初から、私自身が作り出した、虚空の壁だったんだ。


「あたしは、恭介が好き!この思いを恭介に伝えて、あたしは、幸せになりたい!!」

「…それで良いんだ、さやか」


やっと見つけた、あたしの答え。
最初から自分でわかっていた。けど、あたしの中の何かが邪魔をしていた。
もう、迷わない。
杏子や、まどか、ほむら…そして、マミさん…ハルト。

皆があたしの為に行動してくれた。
きっと、自分一人じゃこの答えにはたどり着けなかっただろう。

あたしの幸せ。
ずっと、他人が悪いと決め付けて、現実から逃げてきた。
けど、それは違った。

伝えなきゃ…この思い。
恭介に…恭介に!


「やっと自分の気持ちと向き合えたんだね、さやかちゃん」

「えっ、あ、あんた!」
「ハルトくん!?いつの間に…」

ふと、後ろから声が聞こえてきた。振り向くと入口際で立っている男が一人、見知った顔…ハルトだった。ハルトはコツコツ…と音を立てながら私の傍に寄ってきた。
「さやかちゃん、その答えにもう迷いはないね?」
「うん、…大丈夫。もう現実からは逃げたりしない。あたしは、恭介が好き…大好き!ずっとずっと、昔から大好きだった!!」
「…だってさ!仁美ちゃん」
「…っ!!?」
今、ハルトはなんて言った?…仁美?

すると…入口際からまた、もう一人見知った人影が現れた。
そこに立っていたのは…っ!!

「仁…美?」

「お久しぶりです、美樹さん」

「なんで、…仁美がここに?」
「俺が連れてきたんだよ。ちょっとおせっかいかなとは思ったんだけど」

「そんな…なんで…」
「美樹さん」

「っ!!?」

「先程の言葉に、嘘、偽りはありませんね?」
「あっう…その、…。そうよ、あたしは恭介が好き。愛してる。…だから、遅くなっちゃったけど…ここで言わせて、仁美」

「はい。美樹さんの気持ちは、全て受け止めます」

「あたしは…ずっと昔から恭介が好きだった。だから、仁美に恭介は渡せない。絶対に…」


あたしは断言した。
仁美は、いつものおっとりとした表情ではなく、真剣そのものだった。
こんな表情、初めてみた。
けど、あたしの決意はもう曲がらない。
仁美に、恭介はとられたくない。

少しの間、皆が沈黙状態だった。
仁美が口を開いたのは、その数分後だ。


「その言葉…ずっと、待っていました」
「えっ…仁美?」

「行ってあげて下さい!上条くんの元へ!」
「っ!」
「上条くんはずっと美樹さんが来るのを待っています!!その気持ち、その感情を早く上条くんに伝えてください!!」

「…っ…ありがとう…ぐす、ありがとう仁美!皆、ごめん!私ちょっと行ってくる!!」

私は皆に頭を下げたあと、走り始めた。
目的地はもちろん、病院だ。
…行かなきゃ…恭介の元へ!

皆の気持ちを…仁美の気持ちを…踏みにじらない為に!!


作品名:Wizard//Magica Wish −9− 作家名:a-o-w