黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 6
「う…くく…」
驚くことにロビンは剣を杖に立ち上がった。
「ロビン!なぜ」
リョウカは驚いていた。それもそのはずだ、奥義を受けて立ち上がる者は愚か、生きている者を見たのは初めてであったからだ。
もちろん死なないように加減はした。しかし、立ち上がれるほどには加減していない。
「うぐ!」
ロビンは胸を抑えてうずくまった。
「ロビン!」
リョウカは駆け寄った。
「胸の奥が…熱い、意識が…、自分が自分でなくなるようだ…。ぐわあああ!」
「ロビン!」
ロビンの体が妖しく輝きだした。その光は黒いような、紫のような、かなり不気味な色をしている。なんと光の中でロビンの傷が塞がっていく。
やがて光が消えた。ロビンはうずくまった体制のままでいる。
「ロビン…!」
リョウカの言葉は剣と剣がぶつかり合う音でかき消された。
リョウカは突然の不意打ちに驚き、後ろに飛び退いた。
ロビンは立ち上がった。剣を構えず、だらりとした手に持ち、目元は前髪に隠れて見えない。
見た目はいつものロビンであるが、雰囲気が今までとまるで違っていた。
ふと、ロビンは何かを呟いた。その声はとても小さく、喧騒にほとんどかき消されたが、リョウカは僅かに聞き取った。
殺す、とロビンは言っていた。
『ガイア!』
ロビンは低い声で詠唱した。
ロビンが立つところ以外、全ての地面が光り輝き、一気に大地のエネルギーを噴き上げた。
これまでも同じエナジーを使っていたはずなのに、威力、範囲ともに段違いである。
『レジスト!』
かわしきれないとリョウカは判断し、ドーム状の防御壁を作った。
噴き上がる力は強大で少しでも気を抜けば一気に押しつぶされそうだった。
大地のエネルギーが止まるとすぐにまたロビンはエナジーを発動した。
『スパイア!』
これまでよりも大きな土の槍はいとも簡単に防御壁を割った。
「く!」
リョウカは横に飛び込んで、土の槍をかわした。地面に落ちて土の槍が砕けている中、ロビンは斬りかかってきた。刃と刃がぶつかる。
速い、リョウカは思った。無駄の無い動きに流れるような連続攻撃。まるで別人だった。
ロビンの剣に迷いは全くない。本気でリョウカを斬ろうとしている。
刃を弾き、リョウカは距離をとった。
――これならどうだ!――
リョウカは一気に攻め寄せた。そして手の届く距離で身を翻して背後に回った。
「転影…」
リョウカは驚いた。ロビンはすでにこちらを向いていた。
ロビンは剣を突き出した。
リョウカは伏せてかわそうとしたが、かわしきれず肩を刃が掠めた。
「ぐう!」
リョウカが肩を押さえている間にもロビンは攻めかかった。
手の届きそうな距離までロビンが攻め寄せてきた。リョウカは無条件に抜刀し、ロビンを斬りつけた。しかし、その手に手応えがなく、虚空を切り裂いただけであった。
ロビンの姿はリョウカを横切って背後に回った。
「まさか!?」
振り向こうとすると空中に跳ね上げられた。
「転影刃…!?」
いや、違う、とリョウカは思い直した。転影刃ならば背後に回って一撃のはずである。しかし、それが打ち上げられた。
「まさか、そんな…!?」
ロビンは落下してくるリョウカに無数の突きを繰り出した。
リョウカは空中で身を翻して体制を整え、突きを防いだ。しかし、とてつもなく速く、連続した突きであり、空中に身があるということもあり、とても防ぎきれず二、三回受け、とどめの一撃を食らった。
リョウカは試合場の端まで吹き飛ばされた。
――転影刃と連突刃の連携なんて…――
『キュア…ベスト』
リョウカは最大の回復エナジーを発動したが、あまり回復しない。度重なるエナジーの使用でエナジーがなくなり始めていた。
ロビンはゆっくりと歩みを進める。殺気を抑えようとしない、さながらなぶり殺してやろうと言っているかのようだった。
「く、『フレアウォル!』」
『クエイクスフィア!』
リョウカから発せられた大きな炎は地面を砕いた瓦礫により阻まれた。
『レイ!』
『スパイア!』
ロビンは一直線に走る電流を土の槍で相殺した。
『チルドマウンテン!』
『ガイア!』
リョウカは氷山のごとく巨大な氷を作り出したが、大地のエネルギーで砕かれ、溶けていった。
「くそ!これならどうだ!」
リョウカは残るエナジーを全て剣に込めた。剣が呼応して、赤く、大きな光を発した。
「炎龍刃!」
抜刀と同時に剣の軌跡から炎が巨大な龍の形となり、ロビンに襲いかかった。
「どうだ、これを防ぎきれるか!」
ふと、ロビンの表情が見えた。炎の熱風が前髪に隠れた目を垣間見せた。
笑っていた。この世のものとは思えないほど恐ろしい笑みであった。
狂気に満ちた目は赤く輝き、迫り来る炎の龍に喜びを抱いているようにも思えた。
ロビンは手をかざし、低い声で詠唱する。
『マザーガイア!』
とてつもなく巨大な大地のエネルギーは巨大な龍をもいとも容易く包み込んだ。
「そ…んな…バカな…!」
龍とエネルギーの相殺により、大爆発を起こした。
とてつもない爆風に観客席は阿鼻叫喚としていた。
「く…」
リョウカはエナジーを使い果たし、片膝を付いた。最早勝負は決まったようなものであったが、ロビンは戦いをやめようとせず、ただゆっくりと歩みを進める。
リョウカには死の時が近づいているようだった。ロビンが一歩また一歩と歩み寄る度に、その時は近づく。
リョウカは恐怖さえ感じた。確実な死が近づいている。逃げようにも足が動かない。恐怖で竦んでいた。
リョウカの戦闘不能を判断した審判はロビンの勝利を告げた。
「そこまで、勝負あり、優しょ…」
ロビンは歩みを止めない。
「お、おい君、もう勝負は終わって…」
ロビンは狂気に満ちた目で審判を睨むと、恐ろしい声で言った。
「邪魔を、するな…」
するとロビンはエナジーの波動を発して審判を突き飛ばした。
「おい、ロビンの様子がおかしいぞ」
観客席でジェラルドは言った。
「もう勝負は決まっているのに、何故戦いを止めないのだ?」
ウラヌスも異変に気付いていた。
「審判にまで手を上げたぞ。いくらなんでもおかしい」
シオンも言った。
ジェラルド達が話している間にロビンはリョウカの数歩手前で立ち止まった。
リョウカは恐怖に包まれ、喋る事もできない。
「そろそろ…」
ロビンは言い放った。
「死ね…!」
「う、うわあああ!」
リョウカは恐怖の限界を越え、金切り声を上げてロビンに斬りかかった。しかし、前にロビンはいない。既に回り込まれていた。
ロビンはエナジーの波動を発した。それは二つの光の輪となり、輪は二本の光の剣に姿を変え、リョウカに突き刺さった。しかし、この剣はリョウカの動きを止めるためのもので、死には至らない。
本当の攻撃はこれからである。
ロビンは剣に更なるエナジーを込めている。力は更に強まり、エナジーの光が発せられる度に強風が巻き起こっている。
リョウカは光の剣に貫かれ、少しも動く事ができない。ただロビンのなすがままの状態となっている。
「ロビン、止めろ!もう勝負はついている!」
作品名:黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 6 作家名:綾田宗