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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 6

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 デッカは顔目掛けて爪を突き出してきた。シオンは手首ごと掴んで顔の寸前で止めた。すると今度は鋭い牙をむき出し、シオンの腕に噛みついた。血が辺り一体に飛び散る。
 シオンは腕だけでなく、体中に激痛が走った。骨まで牙を突き立てられたような気がした。
 シオンは噛まれた傷口を抑え、デッカを睨んだ。
「悪く思うな。獣の戦いとはどちらかが食い尽くされるまで続くのだ」
「へ、俺を食おうってのか?生憎だな、俺は不味いぜ」
 最早試合とは呼べない。獣と人との殺し合いになっていた。
「安心しろ、俺はシオンを殺しはしない」
「そうかい、だったら俺は殺す気でかからせてもらうぜ!」
 シオンとデッカは同時に仕掛けた。剣と爪が交差し、シオンの体にのみ新たな傷ができた。
――斬るのは無理か、だったらどうすれば…――
 シオンの中で刺し貫くという手段を思いついたが、失敗すれば大きな隙を作り、致命傷を受けることになるかもしれない。
 考えている間にもデッカの攻撃は続いていた。素早い動きで、シオンの懐に潜り込もうとしてくる。
 シオンはふと、あることに気がついた。デッカの攻撃のしかたである。それらのどれもが懐に潜り込むほど接近してから行っている。武器が爪や牙といった届く範囲が制約されたものであるが故のことだった。
――ここを突けば、ひょっとして…――
 シオンは迷わずすぐに機会を探り始めた。
「どうした、守ってばかりか!」
 シオンはだんだん攻撃のパターンに慣れてきた。そしてついに攻撃の瞬間を掴むことができた。
 デッカは攻撃しようとシオンに飛びかかり爪を立てて腕を伸ばした。 シオンは待っていたとばかりに爪を右にしゃがんでかわし、剣を突き出した。
 剣はデッカの防具の隙間から胸元に吸い込まれていき、背中まで刺し貫いた。
「ぐ…ほ…」
 シオンが剣を抜くと、デッカは口から血を滴らせて地に伏した。
 デッカの姿が元に戻った。
「急所は外しておいた」
「勝負あり!勝者、第四戦士、シオン!」
 審判の宣言とともに観客席はわいた。
「大丈夫か?」
 シオンはデッカに歩み寄った。
「ああ、私の体は丈夫だからな。だが、さすがにこれほどまともに受けてしまってはな…」
 係員が担架を持ってやって来た。
「シオン君、私と戦ってくれて、ありがとう」
「俺のことは、シオンでいい」
「シオン、またいつか、君と戦いたいものだな…」
 デッカは担架に乗せられ、宮殿の医務室へと運ばれ始めた。
「デッカ!」
 シオンの大声に係員は驚き、止まった。
「またいつか、必ず戦おう!」
「ああ、楽しみにしているよ」 係員は頃合いを見るとデッカを宮殿へ運んでいった。
 その後ウラヌスとナヴァンバの試合が行われた。競走は、あと一歩のところでナヴァンバが勝ったが、試合では大差をつけてウラヌスが勝利した。これで一回戦はロビンとアザートの試合を残すのみとなった。
    ※※※
 コロッセオの最前列の観客席は大歓声に包まれている。この席は立ち見であるが、すぐ目の前で戦士の戦いを見ることのできる最高の席である。
 もちろん戦闘のみならず、競走も間近で見ることができる。
 エナジスト達はロビンのために競走の準備をしていた。
『ムーブ』
 第一試合でリョウカが幅跳びした段差の真ん中に飛び石を移動させた。
 ジェラルドは辺りを見回した。誰一人としてジェラルドの行動にも、障害物の変化にも気付いていない。
 ジェラルドはしてやったり、と一人ひっそりと笑った。
 二つ目の障害物の援護にはメアリィが当たっていた。 一見岩を退かすしか方法はないように見えたが、さらに辺りを見回すと水を貯められている箇所を見つけた。
『チルド』
 メアリィのエナジーによって、水たまりは一瞬にして氷の柱となった。これにより上手い具合に足場ができ、これを跳んでいけば岩を相手にしなくてすむ。しかし、氷柱を作るのはさすがにやりすぎたかと心配になり、メアリィは周りを見たが、やはり誰一人も気が付いていなかった。
 メアリィは胸をなで下ろした。
「よう、そっちはどうだ?」
 ジェラルドがメアリィの所へやって来た。
「ばっちりですわ」
「うっひゃ?、随分大胆なことしたな」
 ジェラルドは氷柱を見て感嘆した。
「私もそう思いましたが、誰も気付いてませんし、大丈夫ですわ」
 メアリィは笑った。
「そうだな、それじゃイワンの所に行こうか」
「ええ」
 ジェラルドとメアリィは人混みを押しのけイワンのいる、三つ目の障害物前の観客席へ向かった。
 そこではイワンが途方に暮れていた。
「イワン、どうしたんだ?」
「あ、ジェラルド、メアリィ、いいところに、あそこに立てられている角材を倒して橋渡ししようと思ったのですが、ボクのエナジーじゃどうにもならなくて…」
 ジェラルドは見た。
 角材の浮かぶ水路の端に浮かぶ角材と同じ形の角材が立てられている。とても不自然極まりないが、エナジーを駆使しろというバビの差し金なのだろうか。
「おっし、オレに任せな!」
 ジェラルドは一瞬考えたが、角材を倒すことにした。
「でもさすがにこれは目に付くかもしれないな。イワン、ちょっと手伝ってくれないか?」
「どうするんですか?」
 ジェラルドは説明した。
 まず最初にイワンのエナジーで観客席一体に強風を吹かせて、次に風の吹く中でジェラルドが角材を倒すというものである。
「こうすりゃあんまり目立たないだろ?」
「いい考えですね、ジェラルド」
「へへ、それじゃ作戦開始だ」
 イワンは観客席の中の方に行き、エナジーを発動した。
『スピン』
 普段使うようなスピンとは性質を変えて、広い範囲に及ぶようにした。
「うわ、すげえ風だ!」
 観客の一人は言った。観客席一体に強風が吹き始めた。 頃合いを見計らってジェラルドもエナジーを発動した。
『フォース』
 エナジーの衝撃波は真っ直ぐに角材目掛けて走った。
 衝撃波が直撃し、さも風で倒れたかのように角材は飛沫を上げて水路に浮かんだ。
「なんだ、あの角材倒れちまったぜ」
「仕方ねえよ。あの風の中じゃ」
 さすがに観客に気付かれたが、上手い具合に風のせいにする事ができた。
「これでばっちりだな」
「後はロビンの試合が始まるのを待つだけですわ」
「ロビン、きっと勝てますよ」
 それから数分後、試合は始まった。
    ※※※
 会場の割れんばかりの開始宣言とともに一回戦最後の試合が始まった。
 ロビンとアザートは一斉に走り出した。
 最初の障害物で、段差の間にはもう足場ができていた。ふと、横の観客席を見ると、ロビンを見て笑顔でジェラルドが親指を立てていた。――ありがとう、ジェラルド!――
 ロビンも親指を立てて応え、ジェラルドの用意してくれた足場を跳んで向こうへ渡った。
 次の障害物では驚くことに氷柱ができていた。飛び越えていけばうまく向こうへ着地できそうになっている。
 観客席ではメアリィが笑みを見せていた。
 ロビンは笑い返した。ありがとう、という気持ちを込めて。
 最後の障害物は角材が橋になっていた。観客席のイワンに感謝しながらロビンは一気に橋を駆け抜け、そのまま試合場へと辿り着いた。
「一着、第八戦士、ロビン!」