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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 6

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 リョウカはかなり驚いていた。この技を防御する者がいると思わなかったからだ。
「転影刃を防ぐなんて…」
「いててて…」
 シオンはどうにか立ち上がった。肌の露出している部分は擦り傷だらけになっていた。
「大した技だな」「当然だ。この技を受けて生きていられたのは今までお前とゴーレムだけだ」
 でも、とリョウカは言った。
「受け止めたのは、お前が初めてだ。シオン」
「ふん、ゴーレムの時はどうだったんだ?」
「刀じゃ死ななかっただけだ」
「そうか、それじゃ俺はゴーレムと一緒じゃないんだな?」
「ゴーレムなんかと一緒にするのは勿体なさすぎる」
「ふ、さあ、お喋りはこの辺にしておこうか」
「ああ、次で決める!」
 お互いに攻めた。
 試合も終盤に差し掛かったが、リョウカはまだ無傷であった。対するシオンは少しずつ攻撃を貰い始め、体力が消耗していた。
 そろそろ決めなければ負ける、シオンは思った。これ以上続けていては体力が保たない。シオンは息も絶え絶えだった。
 しかし、リョウカにはまだ一度も攻撃を加える事ができていない。さらにさっきの技を防御する際に背中から強かに地面に倒れたせいで肩に痛みがある。肩を捻挫しているのかもしれない。
 いずれにしても、もうこの次の一撃で決めるしか勝機はない。
「どうした?」
 リョウカは言った。
「そんなに息を切らして、もう終わりなのか?」
 半ば挑発に近かった。
「ふざけるなよ、俺はまだまだ戦える…」
 かなり無理をしているのが目に見えていた。
「シオン、そろそろ終わりにしようか」
 勝負を決めるつもりである。
「奇遇だな。俺もそうしようと思ってたところだ」 無傷のリョウカ、満身創痍のシオン、勝負は既に決まっているようなものである。
「行くぞ!」
 リョウカは最後のとどめとするべく、駆け出した。この素早い動きはまさしく転影刃のものだった。
――またあの技か…!?――
 リョウカの姿は目の前に迫りつつある。
――恐れるな、引きつけろ。引きつけて奴の攻撃に合わせるんだ!――
 ついにリョウカは顔を前に出せば接吻できそうな距離まで近づいた。しかしそれは、
――残像…!――
 シオンはすぐに後ろを振り返った。今にも抜刀しようとしているリョウカがそこにはいた。
「くらえ!」
 シオンは剣を突き出した。切っ先はリョウカの肩口に吸い込まれていった。
 リョウカは驚いた表情で肩口から血を出しながら飛び退いた。
 シオンはその場にうずくまった。
「くっ!」
 リョウカは肩口を押さえた。指の間から血が流れている。
「シオン、まさか私に攻撃を入れられるとは…」
――それも、転影刃を見切って――
 技を見切られた事にも驚いたが、自らが斬られた方に特に驚いていた。何故ならばリョウカはこれまでに剣での勝負で魔物やエナジストでもないただの人間の戦士に斬られた事がなかったからである。
「ふふふ…シオン」
 シオンは既に立ち上がっていた。しかし、最早立っていることが限界のようだった。
「お前はすごい。ただの戦士にしておくのが勿体ない」
 シオンは乱れる息のせいで答えられない。
「その力に免じて、私の最高の技を見せてやろう!」
「な…に…!?」
 リョウカは一瞬にしてシオンに攻め寄せてシオンの手前でしゃがみ込んだ。そして、立ち上がると同時に抜刀し、シオンを空中へ打ち上げた。
 空中でなすがままになっているシオンにリョウカは連続で剣を突き出した。その数は十を上回る。
「連突刃!」 最後に剣を振り上げた。シオンは試合場の端まで飛ばされた。
 シオンは死ぬようなことはなかったが最早立ち上がることはできなかった。
「勝負あり、勝者、第7戦士リョウカ」
 試合は終わった。
 歓声に包まれている中でリョウカはシオンに歩み寄った。
「ちゃんと急所は外しておいたが、大丈夫、ではなさそうだな」
「これ…くらい…、どうってこと…」
 係員が担架を持って、やって来た。
「おい、担架はいらない、その辺に置いておけ」
「え?」
「シオン、動くなよ…」
 リョウカは目を閉じて念じた。
『キュアベスト』
 シオンを大きく、軟らかな光が包み込んだ。光の中でシオンの傷がみるみるうちに塞がっていった。
 シオンは体に痛みがなくなり、驚いて飛び起きた。
 係員や審判、最前列の観客達はさらに驚いていた。
「そんなに慌てて起きるな。体力はあまり戻ってないんだから」「リョウカ、一体これは何なんだ、何故傷が塞がった?」
「これはエナジー。癒やしの力とでも言っておこう」
 リョウカは試合場を去ろうとした。
「待て!」
 リョウカは振り返った。
「何故試合でそのエナジーとやらを使わなかった?」
「使っていたら、勝負にならなかったからだ」
「あれほどの力がありながら、まだ本気じゃなかったというのか!?」
 リョウカはふっ、と笑った。
「残念だが、そういう事になるかな」
「ふざけるな!」
「っ!?」
 シオンは怒鳴った。
「本気で戦うと、約束しただろう!」
 シオンはリョウカに掴みかかりそうな勢いだった。
 さすがに悪いことをしたと思ったリョウカは謝ることにした。
「すまなかった」
「いいや許さない!絶対に、だから…」
 リョウカは下げていた顔を上げた。するとシオンの顔は穏やかだった。
「だから、もう一度、いつかまた勝負だ」 リョウカは笑った。
「私に本当の本気を出させる事ができるのか?」
「できるさ、やってみせる!」
 リョウカは静かに笑いながら試合場を後にした。歩きながら肩に触れると、エナジーで傷を治した。
 シオンはリョウカの背中をしばらく見続けていた。
    ※※※
 リョウカとシオンの激戦が終わり、ロビンとウラヌスの試合が始まる少し前の事である。
 二回戦目の障害物は小さな迷路に、天秤の仕掛けになった足場、壁に登り三つの滑り台の内一つを選んで進むもの、そして、出たり入ったりする壁の四つである。
 三つ目の障害物はエナジーではどうにもならないが、その他はジェラルド達の力でどうにかできた。
 小型迷路は都合の良いことに手前の方にトライアルで使われた石柱が置かれていた。
 大方ただの飾りであろうが、ジェラルドはそれを『ムーブ』で動かし、足場として裏道を作った。
 天秤の足場は足場の下にメアリィが氷柱を作り、支えとした。
 問題は四つ目の迫り出す壁の仕掛けである。特に動かせそうな物もなければ、裏道を作れそうな足場もない。一体どうすればいいのかとイワンが悩んでいると、イワンは観客達の死角の位置で何かレバーの操作をしている男を見つけた。
 男の手の動きに応じて壁が動いているのだと分かった。
 するとイワンは男のもとへ駆け寄った。
「ちょっと、こんなとこまで来られちゃ困るよ。さあ、あっちへ行った行った」
 男は野良猫を散らすように手を振った。
「ごめんなさい。ちょっとの間我慢してくださいね」
「あ?」
 イワンは念じた。
『ストップ』
 イワンの手元より、時計のような形をした光が現れると、男を縛り付けた。
「あ、あれ、体が動かないぞ!?」
「ごめんなさい、一時間もすればエナジーはとけますからしばらくそのままでいてください」 イワンは走り去っていった。