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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 7

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「行くならオレも行くぜ。イワン、オレにも『インパクト』を頼む」
 イワンはすまなそうに視線を落とした。
「ごめんなさい、さっきのでエナジーが無くなりました」
「何だって!?」
「そういう事だ。ここは私に任せておけ」
 リョウカは笑って見せた。そして、ユニオンドラゴンに目をやり、ゆっくりと歩き出した。
「リョウカ!」
 リョウカは振り向いた。ロビンがじっとリョウカを見つめる。
「やられるなよ」
「当たり前だ、でも、ロビンも急いでくれよ」
 リョウカはユニオンドラゴンに向き直り、行くぞと叫ぶと立ち向かっていった。
 ロビンはすぐさま念じた。ロビンの体が光を帯び始める。
 全てのエナジーを込めるとなると、それだけ大きな力を扱う必要が出てくる。取り分け『ラグナロック』はただでさえ強力で大きなエナジーである。それをさらに強化するだけあって、時間はかなり掛かりそうだった。
 ロビンがエナジーを貯めている間にリョウカは一人ユニオンドラゴンと戦っている。
 持ち前の高い身体能力でユニオンドラゴンを翻弄しているように見えるが、体を強化しているとはいってもユニオンドラゴンの体にはかすり傷程度しか与えられていない。
 素早い動きでユニオンドラゴンの攻撃をかわしているが、あまりにこれが続くと苛立ったユニオンドラゴンがまたギガヴェスタを使う危険性もあった。次にギガヴェスタを使われたら文字通り最後である。
 ギガヴェスタを使われないようにわざと攻撃を受け止めたりするなど工夫している。しかし、あれほどの巨体から繰り出される攻撃をいつまでも受け止めきれるはずもなかった。
 リョウカは後ろに吹き飛ばされた。同時にユニオンドラゴンが火を吹いた。
 一瞬ヴェスタかと思い驚いたが、赤い普通の炎だった。リョウカは飛び退いた。
――まだか、ロビン…――
 ロビンは念じている。目を閉じて、一心に自分の中に宿るエナジーに心を集中していた。
 これを決めなければ負ける。そんな思いがロビンに焦りを呼び始めていた。
 剣がなくなった今、武器になるのはエナジーのみである。まだロビンの背中にはバビから貰ったガイアの剣がある。しかし、抜けた事もない剣を使うという考えはロビンにはなかった。
 ロビンの握り拳を当てた胸元が一際強く輝いた。エナジーの充填が完了したという証だった。後は『ラグナロック』を発動する準備をするのみである。
「リョウカ、もう少しだけ耐えてくれ!」
 ロビンは叫んだ。
 リョウカは答えなかったが、こちらを一瞥した。恐らく伝わったであろう。
 ロビンはすぐさま充填したエナジーを『ラグナロック』に変換した。
 ロビンが手を上げると上空に普段よりも二周り程大きい剣状のエナジーが出現した。
「ぐあ!」
 エナジーの効果がなくなり、リョウカはユニオンドラゴンに吹き飛ばされた。
 今しかない、今しかエナジーを撃つチャンスはない。今まさにユニオンドラゴンはギガヴェスタを使おうとしていた。
「行っけええ!」
 ロビンは腕を振り下ろした。
『ラグナロック!』
 巨大な剣がユニオンドラゴンを貫き、かなり大きな爆発を引き起こした。
「グオオオオ!」
 ユニオンドラゴンは苦悶の叫び声を上げていた。
 手応えあった、確実にユニオンドラゴンの急所を貫いたと、そう思っていた。
 ユニオンドラゴンは大爆発の中に身を包まれ、爆風はロビン達にも吹き付けた。
 爆風が止むまでロビン達は固く目を閉じていた。
 やがて爆風が止み、ロビン達はゆっくり目を開いた。
 そこには伏したユニオンドラゴンがいると信じていた。これで倒れていなければ、もうロビン達になす術はない。
「そ、そんな。バカな…」
 運命は残酷な現実を突き付けた。
 ユニオンドラゴンはまだ立っていた。今までで一番大きな傷を与えたが、倒すには至らなかった。
 突然、灯台が大きく揺れ始めた。すると灯台が四つに割れ始めた。
 四つの割れ目の中心から巨大な光の球が昇ってきた。灯台の灯火がついに灯ったのである。
 さらに悪いことが起きた。
 ユニオンドラゴンの傷がみるみるうちに塞がっていく。灯火の光を受けた事により、合体するまえのように回復していったのだ。
 灯台は元の状態に戻った。
 ロビンは両膝を付いて崩れた。
「もう、終わりだ…」
 ジェラルド、イワン、メアリィ、リョウカもその場に崩れ落ちた。
 ユニオンドラゴンはヴェスタを使った。先ほどのように辺りが火の海となった。とどめのギガヴェスタがくる。
 皆、死を覚悟し、諦めた。
 その時、奇跡が起きた。
 灯台の灯火がロビンを照らした。ロビンが驚いた表情をしていると、使い切ったはずのエナジーが湧き上がってくるのを感じた。
「ロビン、背中の剣が!」
 ロビンは背負っているガイアの剣を背中から外して、それを見た。
 剣が灯火に呼応するように輝いている。
 ロビンは柄に手を掛け、引いてみた。あれほど固く、決して抜けなかったガイアの剣がいとも簡単に抜けた。
 ガイアの剣の刀身は目映いばかりに輝いていた。あらゆる物を斬ることができると、そう剣が言っているかのようだった。
「ロビン、その剣、抜けなかったはずじゃ?」
 ジェラルドが言った。
「それだけじゃない、エナジーが回復して、むしろ溢れそうなんだ」
 ロビンはエナジーを波動にした。
「これならいけるかもしれない」
 ロビンはユニオンドラゴンへ歩き出した。
「また一人で行くというのか!?」
 リョウカが引き止めた。
「いくら剣が抜けたとはいっても無茶ですよ!」
「そうですわ、もう危険な事は…」
 仲間達が引き止めるのも聞かず、ず、ロビンはただ一言告げてユニオンドラゴンに向かっていった。
 オレに任せろ、と言って。
「おおおおお!」
 ロビンは叫び声を上げながら全力でユニオンドラゴンを斬りつけた。
 今までどんな攻撃も通用しなかったというのに、ユニオンドラゴンの前足をロビンはいとも容易く斬った。
 ユニオンドラゴンはどす黒い血を飛ばし、叫び声を上げた。反撃にと突き出した左の前足をロビンはかわし、そちらも斬りつけた。
 ユニオンドラゴンが怯んでいる隙に、ロビンは高く跳び上がりユニオンドラゴンの首を一閃した。
 ユニオンドラゴンは続けざまに傷を受け続けて、崩れた。
 ロビンは切っ先を向け、構えたまま言い放った。
「どうした、この程度か?」
 半ば挑発だった。
 ユニオンドラゴンは火を吹いた。それをロビンはかわし、また新たな傷を与えていく。
「すげえ、ロビンもすごいけど、あの剣、何てすごいんだ」
 離れた所から見ているジェラルドが言った。
「ドラゴンの体をも切り裂くあの剣、ひょっとして…!?」
 リョウカは何かに驚いていた。
「ロビンの剣がどうしたってんだよ?」
 ジェラルドは訊ねた。
「あのガイアの剣こそ、大昔にミコトがオロチと戦った時に使ったというあまくもの剣かもしれん」
 太古の昔、魔龍との一戦の末、錬金術の封印と共に姿を消したというあまくもの剣。地の灯台が復活した事で再び姿を現したと考えれば、なぜ消失したのか、その理由が分かる。