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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 7

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「俺は絶対に灯台を灯さねばならん。だからロビン、おとなしくお前の持つマーズスターを渡してくれないか?」
「…欲しければ力ずくで持っていけ」
「ふん、力ずくか…」
 剣ではとてもかなわない。ならばエナジーがある。
 ガルシアは手を向けてエナジーの波動を発した。ほぼ同時にロビンも発した。
「ぐわ!」
 ロビンに押し負けてガルシアは階段を転がり落ちた。
「ガルシア!」
 シバはガルシアの元へ駆け寄った。
 ガルシアはうつ伏せになりながら階段の上のロビンを見据えた。
「まだ続けるか?」
 ロビンは言った。
 エナジーでもロビンにはかなわない。とすればもう道は一つしかない。
「く、俺ではかなわない。ここは一旦…、行くぞシバ!」
 ガルシアはシバの手を握った。
「待てガルシア!」
 ガルシア達が駆け出した瞬間、突如として大きな地震が起こった。立っているのも難しいほど激しい揺れだった。
「な、何だ?この地震は!?」
 ヴィーナス灯台が灯り、地のエナジーが著しく増幅した為起きた異変だった。
 階段から先が崩れ始めた。先刻の戦いでユニオンドラゴンがマッシブオービットを使い、ぶつかったせいで灯台が耐えきれなくなっていた。
「きゃっ!」
 シバの立っていた所が突然崩れた。
「ぐわ、シバ!」
 シバは僅かな縁に手をかけ、ぶら下がった。しかし、ぶら下がるのがやっとでとても這い上がれそうになかった。
「頑張れシバ、この上に手を伸ばせ」
 シバは少しも動けない。
「無理だわ…」
「諦めてはだめだ!諦めたら、君は…」
「下を見て、ガルシア」
 ガルシアは促されるままに地上を見た。目の霞むほど高いが、灯台の周りの陸がどんどん崩れているのが窺えた。
「ヴィーナス灯台の異変でこんな事になるとは…」
「もうだめ、ガルシア、私これ以上耐えられない…」
 シバの縁を掴む手が片方外れた。
「うわ!手を放すな、落ちるぞ!」
 シバの手から力が抜けていく。
「さようなら、ガルシア…。そして、ありがとう…」
 シバは静かに目を閉じた。同時に手が外れ、地上へ落ちていった。
「シバーー!!」
 叫んでもシバの姿はもう見えなかった。ガルシアは放心したように立ち上がった。目に生気の色がない。
「シバ、俺は…、君を死なせはしない…!」
 ガルシアは喉が枯れる程の大声を上げ、その場から頭を下にして飛び降りた。
――ガルシア!!――
 全てを見ていたロビン達は絶句した。
「さっきの揺れでシバがあそこから…」
「まさかガルシアまでが飛び降りるなんて、信じられません…」
 ジェラルドとイワンは呆然とした。
「ガルシアーー!」
 ロビンは突然駆け出した。向かう先はガルシアの飛び降りた所である。
「バカ、ロビン!危ねえ!」
 ジェラルドはロビンを羽交い締めにした。
「ガルシア、ガルシア!ガルシアーー!!」
 ロビンはその場に泣き崩れた。大声を上げて、何度もガルシアの名を呼んで、泣き喚いた。
「ロビン…」
 イワンは哀れむようにロビンを見た。
「…残りの灯台を灯すなんて…、あいつ言ってたのに…。バカだよガルシア…」
 ジェラルドは強がったが涙声だった。
「シバを追っていったのですから、やはりいい人だったのですね。ガルシア」
 メアリィは言った。
「そうだな…」
 ジェラルドは鼻を啜り、ロビンを見た。ロビンはまだ肩を震わせて涙している。
「ロビンがこんなだから、これからどうするかオレ達で決めなきゃな」
 サテュロスもメナーディも、シン、ガルシアまでもがいなくなり、敵対する者はもういなくなった。これから先今ここにいないアレクスやジャスミン達が灯台を灯し、錬金術を復活させるつもりだったとしても、エレメンタルスターが海の藻屑となった今、最早それは不可能となった。
 もう戦い合う理由がなくなった。同時に錬金術の復活は完全に防ぐことができたと思われた。
 そこで、ジェラルド達はジャスミン達を探し、ガルシアの死を告げるとともに、それぞれの家へ帰るということに決めた。
「よし、そうしよう…」
 ジェラルドは座り込んだロビンの所へ歩み寄り、これからのことを話した。
「…そういうわけだ、だからジャスミン達を探しに行こうぜ」
「嫌だ」
 ロビンは突っぱねた。
「どうして?」
「誰がガルシアの事をジャスミンに話すんだ?どうせオレなんだろ。だったらお前はできるのか?ジャスミンが今度こそ独りになった事を、お前は説明できるってのか!?」
 ロビンは怒鳴った。怒鳴った後でため息を付き、そっぽを向いた。
「もう、何もかもがどうでもいい。ジャスミンなんかどうでもいいんだ。もう放っといてくれ、ジャスミン達を探すんならお前達でやればいい。オレはハイディアへ帰…!」
 ロビンの言葉が途中で止められた。同時に後ろへ突き飛ばされた。頬に鈍い痛みが残る。
 ロビンの言葉を止めたのはジェラルドの拳であった。ジェラルドはロビンの襟を掴み、ロビンを無理矢理立たせて思い切り頬を殴りつけていた。
「ジェラルド!」
 ジェラルドは再びロビンに近付き、胸倉を掴んだ。
「てめえ、もう一回言ってみろ!ジャスミンがどうでもいいだって?ふざけるのもいい加減にしやがれ!」
 ジェラルドは大声で怒鳴った。ロビンはそれでも生気のない目でジェラルドを見る。
「今のてめえは最低な野郎だよ!」
 でもな、とジェラルドの怒鳴りは収まった。
「サテュロス達が合体して、オレ達が途方に暮れてた時、お前言ったよな、『オレ達が諦めてどうするんだ』って。あの言葉、本当にカッコよかったぜ」
「そうですよ、ボクもあの言葉に目が覚めましたよ」
 イワンは言った。
「私も感動したわ、ロビン。どうかジャスミンを慰めてあげてください」
 メアリィも言う。
「ロビン…」
 リョウカは立ち上がった。泣いて赤くなった目で真っ直ぐロビンを見つめる。
「私は、お前の慰めで兄様の、シンの死を受け入れる事にしたんだ。だからお前も、どうか友の死を受け入れてほしい」
 再びジェラルドが言う。
「な、分かっただろ?みんなお前には励まされてんだよ。だから、お前もそんな風になるなよ、オレはお前のそんな姿、見たくねえんだよ…」
 ジェラルドは涙声になり、滑り落ちるように崩れた。
 ロビンははっとなって、目に生気を取り戻した。そして静かに、嗚咽を洩らすジェラルドの背中に触れた。
「ごめんな、ジェラルド、みんな。オレが間違ってたよ…」
 立てるか、と訊ねるとロビンはジェラルドに手を貸し、立ち上がらせた。
「よし、じゃあみんな。ジャスミン達を探しに行こう!」
 皆力強く頷いた。
 ジェラルドがロビンの様子を見て涙を拭いて微笑んでいると、あることに気付き、辺りをキョロキョロと見始めた。
「どうしたんですかジェラルド、そんなにキョロキョロして?」
 イワンは訊ねた。
「いや、どうしたもこうしたも、よう?」
 ジェラルドは妙に勿体付けている。
「何だ、言えよ?」
「いや、オレ達一体どうやって灯台を降りるんだ?」
 あ、と一同は声を揃えた。
 灯台を下りるためのリフトのある向こうへ行こうにも階段から先が倒壊しており、こちら側にあるリフトはどうやら登り用のためにあるらしく全く動く気配がない。