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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 7

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 アレクスが答えた。彼は珍しくガルシア達と共に移動していた。彼とはトレビで合流するまでずっと別行動であった。
 ガルシアはアレクスに言われたとおり、目を閉じ念じ始めた。ガルシアのエナジーが波動となり、波紋のように広がった。
 途端に周辺の大地が振動し始めた。
「うわわわ、一体どうしたというんじゃ!?」
 振動はさらに大きくなっていく。
「兄さん!」
 ガルシアはこれほどの振動の中でも目を閉じたまま真っ直ぐに立っていた。
 次第にガルシアの心の中に声が聞こえ始めた。
――我は汝を受け入れよう。汝進め、扉は今開かれん…――
 ガルシアの体が眩しく輝いた。光は辺りを真っ白にした。
「眩しい!」
「おい、見ろ!扉が開いていく!」
 シンは言った。
 軋んだ音を立てながら扉は少しずつ開いていく。
 やがて扉が大きな音を立て開ききるとガルシアの光も消えた。
 ガルシアは目を開き、溜め息をついた。
「やっと開いたか。行くぞメナーディ」
「ああ」
 サテュロスとメナーディはすぐに灯台に入って行った。
「大丈夫かガルシア?」
 シンは駆け寄った。
「ああ、思ったよりも平気だった」
「ご苦労様でした、ガルシア」
 アレクスはねぎらった。
「地のエナジストとは言え、あなたのエナジーで開くかどうか分かりませんでしたがね」
 アレクスは微笑し、ほぼ確信を持った様子で訊ねてきた。
「ガルシア、あなたこれまでサテュロス達に守られてきましたが、一度か二度魔物と戦いましたね?」
 ガルシアは肯定の意を込めて答えた。
「ラマカン砂漠でマンティコアと戦い、そして倒した」
「やはり…」
 アレクスはほくそ笑んだ。アレクスの予想は当たっていた。そもそも全く戦闘経験ない者が灯台の扉を開けられる程のエナジーを秘めているはずがないのだ。
 しかし、たった一回の戦闘でそれほどまでのエナジーを得るとは、これは面白い、とアレクスは思うのだった。
「ガルシア、あなた達もすぐに灯台に入りなさい。彼らでは灯台の仕掛けは解けない」
 アレクスは空に浮遊し始めた。
「どこへ行くんだ、アレクス?」
 シンは訊ねた。
「私は私であなた達の手助けをしますよ。これから先あなた達が進みやすいように、私が道を切り開きましょう」
 アレクスは消えていった。
「アレクス、あいつは一体何を考えているんだ?」
 シンもガルシアもアレクスの思考は全く読めなかった。自分達の味方をするような事を言っていたが、その実は分からない。だがしかし、彼はどうやらサテュロス達を見限っているようだった。
「まあいいさ、奴はオレ達に協力してくれるってんだろ?だから奴の言うとおり今は灯台に入らないか?」
 シンは言った。
「ああ、そうだな」
 ガルシアは扉の開かれた灯台を見つめた。
「行こう」
 ガルシア達は灯台内部へと進んだ。
 入ってしばらく進んだが、どこまで行ってもマーキュリー灯台ほど難解な仕掛けはなかった。
 途中結界が張っていて通れない所があった。進もうとするとかなり強い力で吹き飛ばされてしまうものだった。結界の先に仕掛けのようなものがあったが、結界に阻まれてどうしようもなかったのでそこは諦めた。
 別の道を進むと大広間に出た。広い部屋の壁に女神像が彫られている。さらに手前にはヴィーナス灯台を縮小したような石の模型が置かれていた。
 女神像の前でサテュロス達が苛立った様子で立っていた。
「どうやらここで行き止まりらしい」
 ガルシア達が近づくとサテュロスは言った。
「これより先には登れぬというのか、ふざけおって…」
 メナーディはかなり頭にきているようだった。
 ふと、ガルシアは何かに気付いた。
 女神像の胸元である。そこに埋め込まれた宝石が淡い光を帯びていた。
 ガルシアは女神像に近づき、宝石に手を伸ばした。その時宝石の光が一瞬強くなり、ガルシアの心にのみ声が響いた。
――ヴィーナス灯台を極めんとする者よ。真の道はここにあらず。真の扉はここより北の地にあり――
 幻想的な女性の声であった。
 声は続ける。
――今ここに真の道を示そう。扉は今こそ、開かれん…――
 女神像から眩い光が発せられ、大広間一体を光が包み込んだ。
 数秒間光が包み込むと女神像から大広間手前の灯台の模型まで光の線が繋がっていた。
「一体何が起こった。ガルシア、お前何をしたのだ?」
 メナーディは訊ねた。
「俺の心に声が聞こえた。ヴィーナス灯台の入り口はここではないと」
「馬鹿な、確かに入り口はあそこだったはずだ」
 メナーディは食い下がった。そこでガルシアは先ほど起こった出来事を全て説明した。
「そんな事があったってのか…」
 シンは言った。
「その話が本当ならば、入り口は北にあるということか…」
 サテュロスが言う。
「そうか、そう言うことか」
 スクレータは何か悟ったようだった。
「どうしたの、スクレータ?」
 ジャスミンが訊ねた。
「ここはきっと出口なんじゃよ。北が入り口と考えるならば南は出口と考えれば納得いくじゃろ?」
 結界で一方通行になっているのだとすれば、その考えは正しい。
 では北の入り口とはどこの事なのか。その答えはシバが知っていた。
「あの、北の入り口とはラリベロの北のバビ灯台のことじゃないでしょうか」
 シバは誰にともなく言った。
「バビ灯台って、トレビが建ててるっていうあれか?」
 シンが訊ねる。
「ええ、私聞いたことがあるんです。バビ灯台の地下には古代の遺跡があるって」
「その話、ワシもバビ様から聞いたことがあるぞ」
 スクレータは話した。
 所在の知れないレムリアを見つけ出すべくラリベロの岬に建設中のバビ灯台。建設が始められたのは一年ほど前の事である。
 まずは土台をしっかりさせるべく作業員達が地面を掘り進んでいた時、突然地面が陥没したという。
 そこから出てきたのは扉だった。開くと階段があり、その先にさらに大きな扉があった。
「それが恐らく遺跡への扉なんじゃろうが、今まで一度も開いた事がないそうじゃ。ワシは思うんじゃ、それは同時にエナジストの力なしでは開かぬヴィーナス灯台の扉なのでは、とな」
「どうやらスクレータの言っている事は正しいようですよ」
 突然どこからともなく声がした。するとガルシア達の集まる中心の位置に水泡が集まり、人の形をなしていった。
 こんな事が出来るのは知っている中でただ一人。
「アレクス、貴様どこにいたのだ?」
 サテュロスが訊ねた。
「私の独断でバビ灯台を調べてきたんですよ。どうにもここがヴィーナス灯台の気がしなかったもので」
 アレクスは入り口は別にあるという事を灯台に入っていないのにどういうわけか知っていたようだった。
 彼によると、ここより北方のバビ灯台の地下に、スクレータの言っていたそれらしき扉を見つけてきたという。
「知ってたんなら何で教えてくれなかったんだよ?」
 シンは言った。
「あくまでこれは私の独断なので、皆さんの手を煩わせたくなかったからです」