<メモ>BLACK AVATAR
崩壊の兆し(ゴッドエデン編)
小さな洞穴。車田が上に羽織ってたユニフォームを脱ぎ、それを眠っている天馬にかけた。
今は彼が天馬の看病をしている。
彼は今昏睡状態だ、体のあちこちが腫れているのが痛々しい。
もしかしたら、なっただろう自分の姿をみな天馬に重ねていた。
同時に彼が無事であったことの安堵感もあった。
今、暗い洞窟の中、たき火をたいて、皆でかくまっている。
みな、表情は暗く、疲れている。これから、明日としれない日々が始まるということを感じているのだ。
神童は皆の様子を見て、ため息をついた。
神童の傷は痛みつけられたというほどではなく、軽くあざが残る程度だった。確かに、立てないときもあったが、今、皆弱った状態でいるのにと気を奮い立たせていた。
そこに、浜野と速水、そして、錦が帰ってきた。
「ちゅーか、全然釣れない」
「魚なんているんですかね……」
二人は満身創痍。疲れ切っていた。
釣りが得意な浜野と釣り仲間の速水、そして、一人、元気な錦に、魚介類の調達を頼んでいた。
「ちょっくら泳ぎにいったけど、まったくおらんかったぜよ」
「やっぱり……」
神童はそうつぶやいた。
「やっぱりって、何か思い当たる節があるのかよ」
倉間が怪訝そうに言う。
「いや……」
「ただいま戻りました……」
陸の方へ向かわせていた信助と影山も渋い顔をして戻ってきました。
「えっと、その……」
「食べられそうなものが身近になくって……」
二人はばつが悪そうに答えた。
「そうか。みんなありがとうな」
全員を振り返り、礼を言った。
「なぁ、神童。お前、さっきから何を考えているんだ?」
霧野は小声で神童に尋ねた。
「いや、おかしいと思わないか? このあたりには生き物が見当たらない。それどころか、植物も短い草木ばかりだ」
ゴッドエデンの周囲だけ、まるで、魔王の城といったように生き物の気配がない。
ウサギ一匹でもいれば、少しでも彼らを満たす食糧になるのに……。
でも、ゴッドエデンの施設より少し離れると、こことは全く違う。木が生い茂り、動物たちも自然と行き交う。
彼らが最初「ここ」へ来たときは花も咲き乱れる広大な平野だったが、今いるところは、単なる「岩場」だった。
皆に心配をかけぬよう、二人は小声で話していた。
「それがどうかしたのか?」
「いや……やっぱり、なんでもない」
疑問を持っているのは自分一人か。
しかし、空腹の上、不安を抱えている。
作品名:<メモ>BLACK AVATAR 作家名:るる