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<メモ>BLACK AVATAR

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 同時に、怒りが込み上げてきた。
「何で、こんなことするんですか。10年前、ボールで俺を助けてくれた……みんなから大好きなサッカーを奪って! なんで……」
 そう、天馬はサッカーボールで命を助けられた。しかし、その助けた本人はサッカーで子どもたちを苦しめていた。
 涙が溢れそうになる。
 その横で、剣城が何の表情もあらわにせず傍観していた。
 聖帝の意思をしっているからこそ、彼はそこには割り込めなかった。
「君は『未来』を考えたことがあるか?」
 唐突な聖帝からの質問に天馬は「えっ?」と答えた。
「未来? どういう意味ですか?」
「文字通りだ。君は優秀なサッカープレイヤーとなり、将来、プロとして活躍したいと思っている」
「当たり前です! でも、フィフスセクターに従っていれば、プロになれるなんて、間違ってます! サッカーは自分やみんなの手で高め合って上手くなっていくものです。管理なんて絶対いりません!」
「なるほど……」
 イシドは低く言ったが、それは天馬にはききいられなかった。むしろ、今までよりも少し寂しそうだった。
「だが、高めたその先には何があると思う」
「高めた……その先?」
 天馬にはわからなかった。
 確かに、勝ちたいという想いはある。
 プロになって、風のごとくフィールドを駆け抜けられるプレイヤーになりたい。強いシュートを打ちたい。ドリブルで選手を抜きたい。
 そのために、今雷門イレブンと一緒に戦っている。
 高めたその先……何を言おうとしているのか。
「ふっ、少し難しい質問だったな。松風天馬君、君に話しておきたいことがある」
 それはとある映像だった。
 部屋にある地球儀のようなホログラムに、この施設に似たような都市が並んでいる映像が映し出された。
 そして、それが急に、強い閃光がなったと思うと、街が半壊した。
 まるで教科書で習った「戦争」のようだった。
「これ……、何なんですか?」
「これは200年後の未来だ」
 映像はなおも続く。
 戦い。ドキュメンタリーで見たような戦車、銃。
 SFで使われるようなレーザーが使われ、あたかも映画のように映像に流れている。
 しかし、違和感がある。
 それらが相手にしているのは「小柄」な体つきをした人たちばかりだ。
 それこそ、重装備など全くしていない。
 そう、見かけは自分たちとそう変わらない。
 やっと、その「人たち」が砂埃から姿を現す。
 やはり、「子ども」だった。
 しかも、各々「武器」をもって、戦っている。
 天馬は戦慄を覚えた。
 しかし、もっと彼を驚かせたのは次の瞬間だった。
 姿をあらわにした少年たちが武器を捨てた次の瞬間、背中から黒い影が現れたのだ。
「あれは……」
 ザー……。
 映像はそこでストップした。
 銀色の砂嵐がそこに舞っているだけだった……。
 部屋は一瞬、静寂になった。
「……あれは、化身……ですよね?」
 天馬の問いに、聖帝も剣城も答えなかった。
「あれが『未来』……『己の力を高め過ぎた』……末路だ。『セカンドステージチルドレン』。あの少年たちはそう呼ばれている。そして、彼らが相手にしているのは勿論、我々、『人間』だ。彼らは化身だけではない、超能力や私たちが持っていない力を使って、大人たちに戦いを挑んでいる。彼らは突然変異……、優秀なサッカープレイヤーから生まれた」
 天馬は何も言い返せなかった。
「『あれ』の存在を消し去るために、我々は動いているといっても過言ではない」
 そういって、天馬の肩を叩く。
「俺たちが強くなろうとしていることはいけないことなんですか?」
 天馬がさびしそうに言う。
 サッカーの過程で得たものが将来、武器となって人々を脅かす。そんな事実を突き付けられて、半ば絶望に陥る。
 聖帝は首を横に振った。
「私もこれを見たときは驚いた。私たちが好きなサッカーを戦争の道具にされているのだからな」
 『私たちが好きな?』間違いなく、聖帝は言った。
「おそらく、化身の使い手はこれから増えていくだろう。君のように、我々の手を貸さずして目覚める化身使いもきっと多くなっていく。恐れているのだよ、未来の子どもたちを。ならば、今から阻止してしまえばいい。そうすればセカンドステージチルドレンも生まれなくなる。そうすれば、サッカーも楽しんでやれるスポーツのままでいられる。そのために、サッカーを管理し、化身の不要な進化を止める。しかし……」
 生まれてしまっている。天馬や剣城たちをはじめとする「化身使い」は……。
「私はそれを知って、サッカーの管理を始めた。だが、それに疑問を持ち始めた。結局、我々は君たちの未来を大人の都合で書き換えてしまい、君たちの希望を失わせていくことに……それに」
 ふいに、聖帝は剣城の方を見る。
「もう、『化身の進化』を防げない」
 そう、剣城はフィフスセクターの力を借りずして、化身を現した少年なのだ。フィフスセクターの手の届かないところで「化身の進化」は始まっているのだ。
「ならば、フィフスセクターの『管理』に終止符を打つ。それが、私の意志だ」
 聖帝イシドシュウジがそこまで考えているとは意外だった。
 フィフスセクターのことをはじめて知った時「ひどいことをする組織」としか考えていなかった。
 しかし、聖帝イシドシュウジの目の輝きは決して悪意を持った目ではなく、覚悟を持った強い目つきだった。
 不思議と信じられた。
 命を救われたからではない。「イシドシュウジ」という人間に魅せられている。
 不思議な感覚だった。それはまた「誰か」の持つ雰囲気とも似ていた。それが誰なのかわからなかったが。
 しかし、『管理』に終止符を打つ。そう彼は言った。だが、一つ確信が持てたのはやはり彼はサッカーが好きだということだ。
 自然と笑顔になる。
「私は君に協力してもらいたい。管理サッカーに終止符を打ち、自由なサッカーができるように」
「それはいままで俺たちがやってきたことです。必ず、ホーリーロードを優勝します」
 自信たっぷりに彼は言った。自分の敵ながら、彼ははっきりと告げた。
「それだけじゃない、君にはシードになってもらう」
「お、俺がシードに?」
 天馬が驚きを隠せない。
「その方がフィフスセクターの目をごまかしやすいからな。だが、私に協力してもらう以上、君も犯罪者だ。プロへの道はあきらめてもらうほかならない。君の未来を奪うようで申し訳ないが、そういう覚悟がなければ本当の意味で、サッカーを……未来を変えることはできない」」
 少々考えた。シードになるということは、フィフスセクターの言いなりになるということ。
 だが、聖帝は嘘はつかない。しっかりと自分の目を見据えていう。
 自分のプロの道がなくなる。犯罪者になる。
 しかし、それ以上にサッカーを他の者に奪われたくない。
「わかりました。俺はあなたに協力します」
 決意を込めて、聖帝に言うと、彼は力強くうなずいた。

作品名:<メモ>BLACK AVATAR 作家名:るる