<メモ>BLACK AVATAR
聖帝と皇帝
松風天馬……。
確かに、彼なら未来を変えてくれるかもしれない。
「サッカーは自分やみんなの手で高め合って上手くなっていくものです。管理なんて絶対いりません!」
彼は自分の葛藤を抱えながらも平然と自分にはむかってきた。
そこからは強い闘志がうかがえた。
かつての旧友を思い出して、彼の口の端が上がった。
「へえ、これが王様の部屋か」
ふと思考にふけっていると、部屋から誰かが現れた。
白い髪とゴーグルをかけた、そう、松風天馬に似た男の子だ。
「いつの間に」
「さぁ、いつだろうね?」
そういうと少年は悪意のない笑みを浮かべ、手で天井を仰いだ。
彼の眼は澄んでいた。
「……」
「悪い悪い、僕の名前は、サリュー・エヴァン。みんなからは『SARU(サル)』と言われてるけどね。信じてもらえないかもしれないですけど、僕は200年後の未来から来たんだよ」
「未来から?」
多少動じたが、そのそぶりを見せず、彼は言った。
「そう、あなたたちが『懸念している』未来から。僕はセカンドステージチルドレンの皇帝。まさか、この時代に、僕たちのことを心配してくれる大人がいてくれるとは思っていなかったから。いつだって、子どもは大人の道具。そうだろう?」
心なしか、SARUは嬉しそうだった。
「所詮、僕らのことがやることなんて、『空想が肥大化した』くらいにしか思ってないんだろう?」
それは図星だった。
「ひょっとして、当たってた? まぁ、大人が考えるくらいのことはわかるさ」
「……何故来た」
「話をしておきたくてさ。今の聖帝と未来の皇帝。なんていうのかな、そう、密約!」
そういって、陽気に話しかける。
「あの映像はエルドラドが提供したものだもんね。もしかしたら、『わざと』提供したのかもしれないね。脅しをかけるために。まぁ、それはどうでもいいんだけどさぁ。僕らと協力しない? エルドラドを倒すために」
「……一つききたい。何故、君たちはエルドラドと戦うんだ?」
SARUは急にむっとした表情になった。
「僕らは大人を憎んでる。すごい力を持ってるからって、差別して、隔離して、言葉で釣っては、僕らを利用する」
そして、笑顔になる。
「なんてね。僕らは僕らのいた証をとどめたい。僕らの命は限られているのだから……。見返して、僕らが人間よりもすばらしいことを証明したい」
聖帝は、ふっと笑った。
「考えておこう」
ここで答えを出すのは得策ではない。彼が出現したということは必然的にエルドラドも動き始めたことを意味する。
「そう」
SARUは少し残念そうに口を曲げた。
「じゃあ、いい返事を期待しているよ」
そうきびすを返すが、彼の眼はどこか恨んだようだった。
作品名:<メモ>BLACK AVATAR 作家名:るる