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僕のものではない君に

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バサラと出会った晩から数えて五日目になる。
この先、バサラはどうするのだろうか。
昨晩の様子から記憶の断片が戻ったように見えた。
レイもいるのだ、自分が気にすることもないだろう。
約束の残り二日間を、ガムリンは少し名残惜しく感じた。
最初こそ、煩わしく思っていたバサラに、今は違う感情を抱いている。
今夜は、ゆっくり話でもしたいと思った。。


その日、ミレーヌに会ったのは本当に偶然だった。
仕事帰りに、駅前の書店にいたところに声をかけられたの だ。
バンドの練習まで時間があるらしく、お茶でもどうかと誘ったのは ミレーヌからだった。
ガムリンは女性と二人きりで話をするのは得意ではなかっ た.
駅前のカフェに入ると、 明朗な彼女はお構いなしに話し続けた。
七人姉妹の末娘なので母親がうるさいのだそうだ。その母はこの町の市 長をしているとも聞いた。
ガムリンの表情が曇った。真相は定かではないが、先日の 無差別殺人が市長の失脚を狙ったとの噂があった。
「ガムリンさん?」
「ああ、すみません、ちょっと考え事をしてまして」
「あたしの話、つまらないですか?」
ミレーヌは、唇を尖らせてふくれて見せた。
「そ、そんなこと、ありませんて」
ガムリンは本心でそう思った。他愛のない話ではあるが、 くるくると表情を変えながら話すミレーヌを見ているのは 退屈しなかった。
「ガムリンさんは、お仕事は何をなさってるんですか?」
「ええと、警備関連の仕事です」
ガムリンの答えにミレーヌは物足りなさそうだったが、そ れ以上は聞くことはなかった。
SAT隊員には守秘義務があり、職務を明かすことができ ない。
他人のみならず、身内にさえ明かせない場合もあ る。ガムリンは心の中でミレーヌに詫びると、趣味の読書 について話題を変えた。
小一時間ほど話をしただろうか。 外は夕暮れから闇に変わっていた。
「また、何かあるといけないので送りましょう」
「ありがとうございます」
ガムリンの申し出にミレーヌは嬉しそうに頷いた。
レイのライブハウスは駅から少し離れた公園の近くに在っ た。公園を抜ければ店がもう見える。
「もう、すぐそこですから、ここで大丈夫です」
心配には及びません、とばかりに手を振ると、笑顔でライブハウスへと向 かって行った。
ガムリンは安全を確認するために後ろ姿を見守っていた。
すると、一つの影がミレーヌに向かって突進していく。
危機を直感したガムリンが、素早く割って入ると、それは 昨日のミレーヌを襲った男だった。
ミレーヌに降りおろされたナイフをガムリンが蹴り 上げ弾きとばした。
昨日の立ち回りから、相手が手練れではない事はわかって いた。ナイフを失った男は此までかと、踵を返し公園内へ と走り去った。
「ミレーヌさん、警察へ知らせてください!」
それだけ言うと、ガムリンは男を追った。
今度は逃がすわけにいかない。ミレーヌが市長の娘と分かった以上何かあるに違いないのだ。
視界に捕らえた男は公園を抜けて駅付近へと向かっている。
交通機関を使われては、追跡が困難になる。そう判断した ガムリンが距離を積めたその時だった。
男が駅前の中華料理店へ飛び込んだ。
カウンターを越え店主らしき男を拘束した。
「動くなっ!」
遅れて飛び込んだガムリンと居合わせた四人ほどの客が凍 り付いた。
男の手には鈍く光る一丁の銃が握られていた。
作品名:僕のものではない君に 作家名:小毬