Muv-Luv Cruelty Mermaids 1
一方、地上ではラブターがサーフェイシングと高度な三次元機動を駆使しながらBETAを処理していく。
「ラプター…マジかよ…」
「流石は第三世代戦術機ね…」
初めて見るであろうラプターの機動に少なからずアルゴスの2人が驚嘆の意を表す。
「マーメイド3よりマーメイド1!残弾120mm1マグ!」
「…また?」
呆れたようにキャシーが呟く。
「撃破数は私が断トツよ!?」
「ま、そうなんだけどね…」
撃破数を横目にキャシーはぼやく。「あんた、前衛なんだから当たり前でしょ?」という言葉を呑み込みつつ。
「マーメイド1了解。…マーメイド1よりマーメイド2、4。後は頼めるかしら?」
「マーメイド2了解。今回は4機だし、余裕よ?」
「マーメイド4了解。姉さん、あまり暴れないようにね?」
マーメイド分隊から許可を貰うと、スーパーホーネット2機は(キャシー"は")空の突撃砲を放棄。急降下でBETA群に突っ込んだ。
「なっ…あいつらバカか!?BETA群に突っ込むなんて…!」
「マーメイド3よりアルゴス2。大丈夫よ。彼女達なら。」
セリーナの呟く側から2機のスーパーホーネットは短刀を装備し、近接戦を始めた。
「短刀!?アメリカ人が…近接格闘…!?」
アメリカ人は火力至上主義、という固定概念を持っていたタリサにとって目の前の光景は俄に信じられないものだった。
「へぇ〜。しかもあの2人、かなりいい腕してるわね。」
流石にステラも驚いたようで言葉を洩らしていた。
「ちなみにキャシー…マーメイド1は近接格闘が苦手なんだけどね。」
「え…嘘…あれで?」
セリーナの補足にさらにタリサは驚く。近接格闘に自信を持っていただけに、その驚きは尚更だった。
その間もキャシーはBETA群の中を極低空飛行で螺旋状に舞いながらBETAを切り刻んでいく。レインも持ち前の腕で次々とBETAを無力化していった。キャシーの強化装備の耐G処理の限界値はとっくに越えており、最早その感触が心地好くさえ思えていた。
「このクズ野郎がぁぁぁ!」
「―くぅぅぅっ、私の邪魔をするなぁぁぁ!」
レイン、キャシーは"最高にハイ"になりながらリズミカルに惨殺していく。
「き、きやぁぁぁぁ!」
ふとオープン回線に悲鳴が轟く。見ると一機のラプターが戦車級に複数取りつかれていた。
「ちぃっ!」
舌打ちを打つキャシーは件のラプターに急接近し、戦車級を引き裂きにかかる。
「マーメイド3!サラウンドワイプアウト!」
「了解!」
力加減を間違えれば機体ごと切り裂いてしまう。
キャシーは慎重かつ迅速に切り裂いていった。その間、近付いてくるBETAをセリーナが狙撃していたため、キャシーは戦車級解体処理に集中することができた。
「これでOK。…大丈夫?」
「はい…ありがとうございました…」
「気を付けてね?」
そう言い残すとキャシーはバーニァをフル稼働させながら僚機の元へ戻る。
「―大丈夫だった?あの娘。」
「とりあえず。さぁ、私達もさっさと終わらせましょう。」
2機のスーパーホーネットはその後も解体ショーを続け、無事に全てのBETAを平らげた。
◇◇◇
1時間後。
第二波BETA群を掃討し帰投命令が下ると、交代に来た戦術機部隊と入れ替わるように3部隊は格納庫へ向かった。
「マーメイド1よりマーメイド3。…いい加減にしなさいよ?」
「ごめ〜ん。でも、弾倉無くなっちゃったし。」
「謝るならもう少し申し訳なさそうに謝りなさいよ…今までみたいな闘い方してると貴女、本当に早死にするわよ?」
レインのおどけたような謝罪にキャシーは溜め息をつく。
「マーメイド4よりマーメイド1。無理です。姉さんは。性癖みたいなものですから。」
「アルゴス4よりマーメイド1。…こちらにも短刀を振り回すのに生き甲斐を持ってる娘がいますよ?」
「…マーメイド1よりアルゴス4。その娘、マーメイド3…レインと気が合いそう?」
「ええ。それはもう。…ねぇ、タリサ?」
「ス、ステラ!?」
いきなりの指名に驚いたような表情を見せるタリサ。
成る程どうやらこの衛士がレインと同類の変態か。
一瞬でタリサの本質を見抜いたキャシーはオーダーを下す。
「マーメイド1よりマーメイド3、アルゴス2へ。貴女達、気が合いそうだから今度機会があったら分隊を組みなさい。」
「「はい!?」」
立派にユニゾンを奏でる辺り、相当気が合うのだろう。
「アルゴス4よりマーメイド1。後始末はどうするんですか?」
「…貴女の部隊に女好きの衛士がいた気がするわ。彼に頼みましょう。」
「貴女いい観察眼してるわね。それがいいわね。」
「よくねぇ!」
タリサが吠えると隊は笑いの渦に包まれた。
作品名:Muv-Luv Cruelty Mermaids 1 作家名:Sepia