Muv-Luv Cruelty Mermaids 1
「君達を出来ればプロパガンダとして死地に送りたくはなかった。君達が不本意であることは分かっている。…本当に申し訳ない。」
司令はそういって頭を下げた。
一介の衛士に基地司令が頭を下げることなど、まずない。キャシーは慌てて頭を上げるよう促した。
「司令、頭を上げてください。そのお気持ちだけで十分です。」
「そうか…そう言ってもらえると助かる。」
私達なんかのために頭を下げてくれる。更には悔恨の意まで表してくれた。
上層部にも恵まれたな―
そんな思いを胸にキャシーは続ける。
「私達がアメリカ海軍最強であると認識してくださり、また我々への心遣いに感謝します。司令…私達の腕、世界に見せつけて来ます。」
「…そうか。」
そう言って再び司令は命令を下す。
「では…マーメイド小隊に欧州派遣任務を命ずる!アメリカ海軍の力を存分に見せつけてこい!」
「了解!」
「そして…1人残らず基地に戻らせろ。いいな?」
「了解!」
司令室を後にしたキャシーは命令を通達すべく、マーメイド全員を召集した。
◇◇◇
30分後、ブリーフィングルーム。
「嘘…」
命令通達後、まず口を開いたのはレインだった。
「欧州…って…なんで…」
「理由は説明した通りよ。」
「宣伝材料なんて…納得いかないわよっ!ふざけないで!」
「レイン、落ち着いて。…キャシー、それは決定事項なのね?」
「ええ。そうよ。」
「そんな…欧州だなんて…」
震えながら呟くフェミニ。実戦経験の少ないフェミニとしては、いきなり死地に送られるなど想像もしなかっただろう。
「でもね、基地司令は仰ったわ。」
一拍置いて―
「すまなかったって。」
「えっ…」
「私達を宣伝材料として死地に送ることに申し訳ないと仰ってたわ。」
「それに…」
「…」
「異動命令の他にもう1つ、命令があったわ。」
「…命令?」
セリーナが尋ねる。
「そうよ。…1人残らず戻らせろってね。」
キャシーの言葉に3人が彼女を見つめる。
4人の沈黙後、しばらくして―
「命令なら仕方ないわね。」
「そうね。司令から無理難題なオーダーも受けちゃったみたいだしね。」
「司令に期待もされてるみたいだしね。」
セリーナの言葉にレイン、フェミニも続く。
「じゃあ、命令の確認よ。マーメイド小隊は、欧州への異動が決定したわ。同時に―」
「誰1人欠けること無く、基地に戻るわよ!」
「了解!」
夜のブリーフィングルームに人魚の声が響き渡った。
作品名:Muv-Luv Cruelty Mermaids 1 作家名:Sepia