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Muv-Luv Cruelty Mermaids 1

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2.Encounter at Europe



2週間後。輸送機内。

「やっぱり、荒んでるわねぇ…」

「ええ。殆どの土地がBETAに平坦にされちゃったからね…」

荒野と呼ぶに相応しい光景が輸送機の窓越しに広がっていた。
アメリカではネバダでしか見ることのない情景にレインとフェミニが声を漏らす。
ネバダの場合、自然によって造られた世界観だが、"ここ"は違う。BETAによって造られた世界観だ。
そういった感情も2人の呟きには含まれていた。

「でもちらほらと緑も残ってるわね。」

セリーナが言葉を繋げる。

「そうね。私達にとって緑は身近な物だった。失って初めてその物の大切さを感じるって事なのかしらね。」

キャシーの言葉に3人は沈黙する事で同意の意を表した。
4人の人魚を乗せ、荒野を舞う軍用機は死の淵と隣り合わせの地へと向かっていた。




◇◇◇




2時間後。イギリス軍ドーバー基地。

「着いた…ドーバー、遠すぎ…」

「うわっ、やっぱ欧州の最前線基地は違うね…」

溜め息をつきながら荷物を纏め、思わず本音が出るレインに感想を漏らすフェミニ。

「…でも、最前線にしては設備が整ってると思うわよ。」

「そうみたいね。最前線基地はもっと酷いと聞いていたし。」

セリーナの意見に同意するキャシー。キャシーは他の同僚衛士からは最前線基地はガラクタ小屋みたいだと聞かされていたため、内心嘆息していた。

「…失礼。貴女方は?」

4人が思い思いの感想を述べていると、1人の女性が近付いてきた。歳はセリーナ位だろうか。ストレートの金髪が美しく、豊かな胸元まで伸びている。

「アメリカ海軍カリフォルニア基地から派遣されてきたマーメイド小隊です。」

代表してキャシーが答えると、女性はにっこりと笑いながら自己紹介を返した。

「あら。貴女達も海軍なのね。私も海軍からの派遣部隊、ドルフィンズの小隊長、クリス・トールよ。よろしくね。階級は大尉だけど、気にしなくていいわ。」

「私はキャシー・フォード。マーメイド小隊の小隊長で中尉です。こちらこそ、よろしく。」

「ええ。貴女達とはもっと話してみたいけど、まずは基地に案内するわ。」

「ありがとうございます。」

こうしてキャシー達はクリスの案内によって基地内に足を踏み入れた。




◇◇◇




イギリス軍ドーバー基地、ブリーフィングルーム。

「さぁ、ここが私達派遣部隊のブリーフィングルームよ。」

「ご案内、ありがとうございます。」

「じゃあ、また後でね。」

キャシーはクリスに礼を言うとブリーフィングルームに入る。既に人は集まっており、視線がキャシー達に集中する。クリスはその中に紛れ込んだ。

「来たようですね。」

4人をそう言って迎えたのは黒髪の男。細身でアジア系の顔立ちで笑顔で迎えてくれているが、どこか醒めた表情をしている。

「初めまして。今回、アメリカ軍派遣部隊の総指揮者のユウキ・ブラックマン少佐です。カイザー中隊の隊長も兼任しています。」

「アメリカ海軍カリフォルニア基地所属マーメイド小隊、小隊長、キャシー・フォード中尉です。以下、セリーナ・ウィルキン少尉、レイン・ルコーニ少尉、フェミニ・ルコーニ少尉只今をもってナポリ基地に着任します。」

敬礼と共に着任を伝えると、ユウキも敬礼を返した。

「楽にしてください。皆さんは後ろの空いている席へどうぞ。」

「「「「了解!」」」」

そう言うとユウキは壇上へ向かった。キャシー達も着席する。

「さて、全員集まりましたね。これより、ブリーフィングを開始します。」

派遣部隊全体のブリーフィングが始まった。


「まずは私の自己紹介をしておきましょうか。グルームレイクから派遣されたカイザー中隊の隊長兼今回の派遣部隊の総指揮を務めさせてもらうユウキ・ブラックマン少佐です。よろしく。」

「総員、敬礼!」

―――――!

「ああ、因みに彼はカイザー中隊の副官のユウヒ・ブラックマン。階級は大尉。敬礼は要りませんので。」

敬礼の合図をした男について紹介をするユウキ。


―ブラックマン?兄弟?
キャシーの頭にそんな考えがよぎるが、ブリーフィングは終わらない。

「さて、今回の我々の任務は、国連軍主導の下、フランス領カレーに橋頭堡を築くことです。」

フランス。
リヨンハイヴが建設され、BETA拠点のある国。
そこに橋頭堡を…?
キャシーの不安を他所にユウキは続ける。

「カレーはドーバー基地の目と鼻の先にあります。またカレーを押さえることはイギリス本土の安寧化、ひいては欧州奪還の足掛かりになるとされています。また、本作戦はディザイヤー(希望)作戦と命名されました。尚、作戦時間は約3週間。作戦の進捗状況により早期切り上げ、延期など柔軟に行うとのことです。詳しい作戦内容は明日、通達します。現時点で何か質問は?」

沈黙。大した情報が与えられていないため、無理もなかった。

「では次に今回の作戦に伴う派遣部隊の紹介をします。皆さん、これを機に親交を深めておいて下さい。それが作戦成功にも繋がってきます。」

ユウキによると、派遣された部隊は次のようなものだった。


・陸軍

カイザー中隊
戦術機:ブラックウィドウ(グレイゴースト)
構成:8機

フェニックス中隊
戦術機:ブラックウィドウ(スパイダー)
構成:8機

スパイラル中隊
戦術機:ストライクイーグル
構成:12機

ジョーカー中隊
戦術機:ストライクイーグル(軌道降下兵団仕様)
構成:12機

インビジブル小隊
戦術機:ラプター
構成:4機

・海軍

ドルフィン中隊
戦術機:スーパーホーネット
構成:8機

シーホース中隊
戦術機:トムキャット
構成:12機

マナティー中隊
戦術機:トムキャット
構成:12機

ジュゴン中隊
戦術機:イントルーダー
構成:8機

マーメイド小隊
戦術機:スーパーホーネット
構成:4機

陸軍指揮官
ユウキ・ブラックマン

海軍指揮官
クリス・トール

派遣部隊総指揮官
ユウキ・ブラックマン


(ブラックウィドウにラプター、軌道降下兵団まで…)
あまりのラインナップにキャシーは驚きを隠せなかった。

ブラックウィドウ、ラプターは共に第三世代戦術機、いわゆる最新機であり、また軌道降下兵団はベテラン中のベテランが担う組織だからだ。

海軍もまた、トムキャットを駆る衛士は複座型仕様故にベテランとなる。イントルーダーの衛士にしても強襲、橋頭堡死守に無くてはならない存在であり、恐らくクリス率いるスーパーホーネット中隊もかなりの腕なのだろう。

―この中の1つの小隊として私達は選ばれた…

キャシーは構成紹介の途中感慨に耽っていたが、他の人魚達も同様な素振りを見せていた。


「これで紹介は終わります。この後、懇親会を兼ねたパーティがありますので、そこで親交を深めてください。パーティは地下の食堂で19:00からです。それまでに各々機体の搬入確認を済ませておいてください。では解散。」

解散の一言が告げられると、ブリーフィングルームは一気に騒がしくなった。

「ねぇキャシー。」

「なに?レイン。」

「…凄くない?」

「何が?」
作品名:Muv-Luv Cruelty Mermaids 1 作家名:Sepia