Muv-Luv Cruelty Mermaids 1
「派遣部隊のメンバーに決まってるでしょ?ブラックウィドウやラプター、軌道降下兵団まで…」
「確かにね。」
「でも、私達もそれに相応しい小隊として選ばれたのよ?」
レインとキャシーの会話にセリーナとフェミニも入る。
「そうです。私達も胸を張っていきましょう!」
「そうね。でもあんた、張る胸ないでしょ?」
「あうっ…キャシーさん、ヒドイです…」
「じゃあ、機体の確認に行きましょうか。」
キャシーとフェミニの会話が逸れそうになり、セリーナは強引に戻してきた。
「それもそうね。行きましょう。」
ブリーフィングルームを後にした4人は自分達の愛機を確認すべく、格納庫へと向かった。
◇◇◇
12分後、格納庫。
格納庫は機体確認の為の衛士でごった返していた。
キャシー達は人混みを掻き分けながら自身の機体の元に辿り着き、各々確認を行っていた。
「みんな、確認は済んだ?」
「ええ、ちゃんとあったわ。」
「私もー。」
「私もありました。」
「じゃ、マーメイド小隊は全機OKと。じゃ、整備陣に確認書渡してくるからそこで待ってて。」
「了解。」
「早くしてねー?」
「流石に疲れました…」
3人の声を他所に整備兵に書類提出しに行くキャシー。その途中、クリスに出会った。
「あら、キャシー。貴女も書類提出?」
「はっ。トール大尉も…?」
「ええ。因みに、私の事はクリスって呼んでいいわよ。というか、クリスって呼んで?堅苦しいの好きじゃないの。」
「えっと…じゃあクリス。クリスはどこの基地から出向したの?」
「私はシアトル基地からよ。サンフランシスコからは大分遠いわね?」
「そうね。でも私、シアトルへは何度か遊びに行ったことあるわ。」
「本当?あそこはまだまだ明るいわ。人も、街も。」
「そう…」
「私はあの明るい街を守りたいわ。人々が笑って暮らしている世界を壊したくないもの。失ったものを取り戻すのは、大変なことだし。キャシーは何か守りたいもの、ある?」
「今は何も。でも、何かを守るために闘うのもいいみたいね…私にも、何かを守る為に闘えるかしら…」
「もちろんよ。それに何かを守ろうとする意志は貴女をもっと強くするわよ。ゆっくりでいいから見つけてみなさい。貴女にしか守れないものを。」
「ええ…ありがとう、クリス。」
「いえいえ。…さぁ、早く提出して隊に戻りましょう。」
「そうね。」
ほどなくして2人は書類提出を済ませ、それぞれの隊の仲間の待つ元に戻っていった。
―私の守りたいもの。私にしか守れないもの。それは一体…
クリスとの出合いが少しずつキャシーを変え始めていた。
◇◇◇
数時間後。
派遣部隊ブリーフィングルーム。
パーティも終わり、各々が自室へもどっていたが、そこには2人の衛士がいた。
「今回も厳しい闘いになりそうね。」
「そうですね。いくら精鋭を集めても、隊毎の連携が取れなければ無意味です。」
「いかに短期間で信頼できる関係になるかが鍵ね…」
「はい。ですのでクリス、衛士同士の関係には細心の注意を払ってください。」
「分かってるわ。それを言うユウキも、気を付けなさいよ。」
「了解です。」
「じゃ、私はそろそろ部屋に戻るわ。」
「私も戻ります。」
ブリーフィングルームを出た2人はラフな敬礼をして別れた。
「…今回は死者がでるかもしれませんね。」
自室に戻る途中、ユウキは不吉なことを呟いた。
作品名:Muv-Luv Cruelty Mermaids 1 作家名:Sepia