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Muv-Luv Cruelty Mermaids 1

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4.Crash For East Europe Army



「HQよりマーメイドリーダー。現在の小隊の状況を報告せよ。」

「マーメイド1了解。全機健在。推進剤は平均して9割、弾薬にも余裕がある。」

「HQ了解。マーメイド小隊はその場で待機せよ。」

HQからの通信から、後方待機を命ぜられると思っていたキャシーにとって、小隊の状況を聞かれることは意外だった。

「―グループリードよりマーメイド1。」

HQとの通信を終え暫くするとユウキから通信が入ってきた。

「少佐…!」

「こちらも余り時間がない。手短に話します。」

キャシーの驚きに意を介さず、ユウキは続ける。最前衛での戦闘中のためか、表情に余裕が見られなかった。

「これより貴隊にはインビジブルズと共に東欧州社会主義同盟軍の支援に向かってもらいたい。先程彼らから、補給のための支援要請がありました。彼らが墜ちることは作戦の失敗に繋がります。マップを転送しましたので目標座標に向かってください。」

「マーメイド1了解!」

「―幸運を祈ります。」

通信を終えると座標を確認。
今作戦の最大ポイント、カリーを示していた。

「マーメイド1より小隊各機。これより東欧州の連中の支援に入る。各自指示座標へ進軍せよ。」

「「「了解!」」」

「―どうやら簡単には終わらせてくれそうにないわね。」

「…そうみたいね。」

回線に割り込んできたのはフィール。こんな時でも笑顔だ。キャシーもシニカルな笑みを返す。

「ま、東の連中に目に物見せてやりましょう。」

「ええ、もちろんよ。」

「じゃ、先行するわ。ポイントで落ち合いましょう。」

「了解!」

ラプターのスピードにスーパーホーネットは付いていけない。それを鑑みてフィールは先行という言葉を選んだ。
それを察したキャシーも部隊に通達する。

「マーメイド1より小隊各機。ラプターに追随するわよ。付いてきなさい!」

「「「了解!」」」

跳躍ユニット点火。
匍匐飛行で目的座標に向かう。

「―目標座標まで480秒。」

セリーナの声が伝わる。

「いい?こんなところで墜とされたら承知しないわよ?」

「分かってるよ、私達の力、見せてやるわっ!」

「そうです。さっさと蹴散らしましょう!」

気合い十分のルコーニ姉妹。これなら簡単には殺られないだろう。

「東欧州は…ラーストチカのようね。かなり押されてるみたい。」

冷静なセリーナの分析は続く。

「ブリッツは8。…一個中隊ね。対してBETAは…600!?よくここまで持ったわね。」

「600って…中々ハードじゃない。」

「それに次は私達が相手を…」

セリーナの情報が確かなら、東欧州の戦線が瓦解するのは時間の問題だ。

「―あら、お嬢ちゃん、私達を何だと思ってるの?戦域を支配するのは…私達よ?」

先程から通信を聞いていたのだろう。フィールが話しかけてきた。

「貴女には仲間や私達がいる。きっちりフォローはするから存分に闘いなさい。」

「マクトニー中尉…ありがとうございます!」

「…フィール、ありがとう。」

「いえいえ。―そろそろよ。」

フェミニの恐怖を払拭してくれたフィール。この辺りの気配りは流石だ。

―私も見倣わなければ。


キャシーの思いを余所にカウントは続く。
「目標座標まで残り60秒。」

「―各機兵装自由。敵に備えて!」

「「「了解!」」」

「さあ。ダンスパーティを始めるわよ!」

「「「―了解!」」」

こうして"見えない兵士"と"残虐な人魚"は敵陣内へ突っ込みに行った。




◇◇◇




東欧州社会主義同盟軍担当区域。

「クソッ、戦術機の数が足りなすぎるっ!」

「これ以上の交戦は無理だ!こちらブレスト1!HQ、撤退許可を!」

「こちらHQ。撤退は許可出来ない。」

「…クソがぁ!」

「―!?ブレスト4よりブレスト1!9時方向より機影4!」

「何ッ!?」

「―こちらアメリカ軍派遣部隊。只今より貴隊の支援を行う。貴官の所属とコールサインを求む。」

「―!?こちらは東欧州社会主義同盟軍ブレスト中隊、ルブルック・ブローデル中尉だ!ブレスト1で頼む!」

「了解。こちらはインビジブル小隊およびマーメイド小隊。私はインビジブル小隊、小隊長のフィール・マクトニー中尉。コールサインはインビジブル1だ。」

「こちらマーメイド小隊、小隊長キャシー・フォード中尉。コールサインはマーメイド1。」

「2個小隊!?レーダーには4機と…なッ!?」

訝しむブレスト中隊を無視し、彼らの頭上をラプターとスーパーホーネットが通過する。彼らが捉えていた機影はスーパーホーネットのみだったのだ。

「あれは…ラプター…!」
ブレスト中隊の衛士が言葉を漏らす。キャシーは構わず叫ぶ。

「貴隊は補給に向かえ!我々が迎撃する!」

「…ッ、ブレスト1了解!恩に着るぜッ!5分で戻る!」

フィールとルブルックが通信を終えるとラーストチカ中隊は後退を始めた。

「インビジブル1よりマーメイド1。私達は地上から攻めるわ。貴女達に制限高度でのエアカバーを頼めるかしら?」

「マーメイド1了解。でも弾薬が無くなったら近接戦闘にシフトするわよ?」

「インビジブル1了解。是非お願いするわ。さ、始めましょう。」

「マーメイド1より小隊各機。制限高度でインビジブルズのエアカバーに入る!行くわよ!」

「「「了解!」」」

ラプターによる地上からの制圧を横目に4機のスーパーホーネットは大空を舞う。

「間違っても味方に当てるな!」

「「「了解!」」」


スーパーホーネットは並な衛士では不可能な機動を繰り返し、弾薬の雨をBETAに叩き付ける。要撃級の頭が吹き飛び、戦車級が肉塊と化していく。

「―このクズ共がぁぁぁぁぁ!!」

レインが叫ぶ。

「その汚い面を向けるなぁぁぁぁ!!」

それに乗じてフェミニも吠える。

「…あの娘達ったら…やっぱり貴女の部下ね。」

半ば呆れながら呟くセリーナ。しかし彼女はクールに射撃している分、キャシーにとってはレインやフェミニよりも脅威だった。

「私も肖ろうかしら?」

冗談めいてキャシーがセリーナに問うと、まさかのサムズアップをもらった。レインやフェミニも期待の眼差しで見詰めてくる。ここまで来たらやるしかない。キャシーは大きく息を吸い込むと―

「さぁ、あなた達のダンス、見せてみなさい!ほらっ、醜い臓物晒して踊りなさいよッ!」

「―やっぱり貴女、彼氏できないわね。」

「う、うるさい!」

そんなふざけた会話をしながらもBETAを次々とミンチにする人魚達。

地上のラプター部隊も迅速かつ的確に射撃を続けている。

「BETA個体数、残り180。」

「―ブレストの奴等にBETAを残してあげる必要はないわ!全て平らげるわよ!」

セリーナの報告を受け、キャシーは更なるオーダーを下す。

「マーメイド1よりインビジブル1。戦域個体、殲滅させても怒られないわよね?」

「元よりそのつもりよ?」

フィールの言葉を機にラプターとスーパーホーネットの機動が加速する。
作品名:Muv-Luv Cruelty Mermaids 1 作家名:Sepia