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門之倉 樟
門之倉 樟
novelistID. 45405
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銀の刻のコロナ―ホワイトデー一週間前の統果―

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そんな雲母さんを見て歩武と弓那は真っ青な顔で、ここではない、どこか遠い場所をみているようだ。弓那にいたっては、どこか悲鳴に似た声をぽつりとあげているからタチが悪い。多分、過去に受けたものを思い出しているのだろう。
 
 夕食後、俺は明日翔さんに呼ばれていた。もちろん今日の夕食は、龍護寺、チーム、竜一さんたち、そして論説部の4人。ちょっと軽い同窓会みたいだ。ちなみに夕食前に赤からチョコレートをもらった。コロナと同様にお返しに、こーびをねだったので軽く頭にチョップした。かわいく痛がっている赤は可愛かったな。
 居間からずいぶん歩いてところで明日翔さんが見えた。手招きをしており急いで近づいていく。
「統果君。チョコレートです」
 明日翔さんが放送された箱を差し出す。受け取ったのを確認してから彼女が背を向けて歩く。ふと何かを思い出したかのように立ち止まり振り返る。
「そうそう、お姉さんには来月のお返しは結構ですよ。そのぶん、他の女の子たちに回してください。これから居間に向かってくださいね。命令ですよ」
 なにか声をかけようとしたときには明日翔さんはすでにいなかった。ありがとうございます、けど、あなたの分も用意しますよ。そう心の中で呟いて居間へと向かった。
 
 居間に向かうと、そこには刻乃さん、茜さん、健見、かなめがいた。テーブル上には健見以外、チョコレートが入っていると思われる箱がある。俺は彼女たちの対面に座り込む。
「どうして健見がここに? チョコは渡さないだろうし」
「統果さんが刻乃さんに変なことをしないかの監視です。それとチョコはすでに刻乃さんに渡したのでありませんよ」
 健見が鋭い目で睨んでくる。それはもう、ものすごいオーラだ。なんで俺、ここまで嫌われているのだろう。
「統果ちゃんにプレゼント。刻乃ちゃんもそうだけど、手作りしたのよ。中にたっぷりと愛情が込められているから、一口一口かみしめて食べてね」
 刻乃さんの手作りというところで、一瞬だけ注意がそれる。だが次の瞬間、茜さんも手作りだという事実に気が付く。そして愛情がたっぷりだ。つまり大量の香辛料が入っているはずだ。食べるときはそれなりの準備が必要だな。
 次にかなめが箱を差し出しながら、話しかけてくる。ちょっと照れくさいのか、頬を赤らめつつ。
「私には似合わないと思いますが。よろしければ、どうぞ」
 そんなこと全然ないよと言ってから受け取った。かなめは女の子なんだし、比べる対象が間違っている気がするが、恵理や弓那に比べれば全然様になっている。そう思ったことが悟られたのか、俺しか見えない場所に藍がいて、にやけながら2本の指をさしていた。その先には弓那と恵理がいた。
 そんな俺の様子を見て、かなめは不安がるが、必死にフォローする。そして刻乃さんの番がやってくる。
「その茜も言っていたが、私も手作りだ。その……君の口にあえばいいのだが」
 照れながら刻乃さんが渡してくる。そんな刻乃さんがかわいい。そう思ったとき、横から殺意の視線を向けられていることに気が付く。これ以上健見の怒りを買うのも困るので、早々に受け取った。そのときの刻乃さんの顔はいうまでもない。
 
 風呂から上がって、休憩しているところに藍と目があった。目を付けられたのか、嬉々として近づいてきた。やばい。
「プレゼントをあげる。具体的にはチョコレート」
 お、おう。そう答えて恐る恐る受け取る。受け取ること自体が間違っている気がするが。
「お返しとして、私を恋人にしてほしい。そうすれば、この作品のヒロインとなり目立てるから」
 やっぱり、間違っていた。どうすればいい。周りに助けてくれそうな論絶部はいない。しかたない、きつい一言を言うしかないか。
「多分、藍がヒロインになるのは、もうないと思う」
「むぅ。なら、このチョコの300倍の値段のものの食事で、今の暴言を込めて水に流そう」
「そ、それなら、藍を差し置いて食べるのもなんだから遠慮しておくよ」
 彼女は負けを悟ったのか、地面に膝をついて倒れた。絶対にわざとだから介抱はしない。それは他の人に任せよう。この場を離れたらすぐにでも立ち上がりそうだけど。
 これからどうするかと考えたところで今日一日、何もしてこなかった彼女のことが気になりだした。ミュリアルだ。彼女ならバレンタインという日を逃しはしないはずだ。
 帰ってきたら既に龍護寺にいた。その理由を彼女に聞いたところ、仕事がないからと言っていた。もしかして、それは嘘で体調が悪いからでは。今日の食事の時も口数が少なく、つらそうにしていた気がする。こうしちゃいられない、すぐに彼女のもとに行かないと。
 探し始めた刻乃さんと出会い、すぐに彼女がいる場所がわかった。どうやら俺の部屋にいるらしい。礼もままならず、すぐに向かっていく。こんな様子から刻乃さんは「どうした」と言っていたが、確信がないから何でもないと返事をした。
 勢いよく襖をあけて、部屋の中を確認する。すると俺の布団を出して寝ているミュリアルの姿があった。まさか本当に体調が悪いなんて。
すぐに近づいて、彼女のおでこに手を当てる。よくわからない。なら、次はおでこをくっつけて測るまでだ。
 おでこをくっつけた瞬間、彼女の目がパッチリと開く。とても笑顔に見えた。抱きしめてられ強引にキスをされる。ずいぶん長くされていた気がするが、何も考えられない状況だから、よくわからない。
 そうして呆気にとられている俺を尻目にして、えいっと掛け声をかけて体制が崩れ、彼女と上下が逆転する。彼女が上で、俺が下になり、お腹あたりに座っているようだ。
「ふふふっ。統果様ありがとうございます。簡単に引っかかりましたね。こうして、行動を起こさねば気になると思っておりました。」
 くそ、騙された。ミュリアルの満面の笑顔がこわい。体を動かそうとしても、彼女によってうまく動けない。
「しかし、統果様も積極的でした。まさか自分からキスをなされるとは。そんな激しい、欲望まみれのお姿も素敵です。あっ、ちなみに本日のプレゼントは私です。早く召し上がれ」
「ミュリアルからしたんだろう。それに今日、似たようなことを聞いたよ!」
「まぁ、そんなにすぐに私と繋がりたいのですか。もぅ、仕方のない人です。乙女の恥じらいの気持ちを知ってください」
 いつものことだけど、なぜこうも話が通じないんだ。だれか助けてくれと、そう願ったとき襖が開いた。
「今日はコロナするの!」
「いーや、赤だよ」
 こうして3人よる俺の取り合いが始まる。結局のところミュリアルにマッサージすることで決着がついた。そのとき彼女が「エッチものでも……いいえ、エッチものでいいですよ」と耳元でささやいていた。当然のごとく無視をした。




というのが、バレンタインにあったのだ。結局、プレゼントをもらったのは、計10人だ。ミュリアルも一応は入っているが、藍は入れていない。そもそももらっていないし、論説部が来るのかがわからない。
お金のほうは問題ない。この日のために、刻乃さんから貰っていたお金を貯めていた。だから問題はここじゃない。そう問題は計10人、そのうち4人には本命のプレゼントを渡さないといけないことだ。