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機動戦士ガンダムRS 第22話 紅に染まる海

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その麦わら帽子には、蒼いリボンが巻かれていた。
「日よけには、ちょうどいいんだ。
UVカットの化粧品が今ない状況だから極力日焼けは、しないように。
まあ旧イランあたりの民族衣装ならベストなんだがあれは、顔をかなり隠すから身分上厳しいからな」
 サオトメは、苦笑しながら言った。
全人類がまだ地球にいたころイスラム圏の女性は、聖典クルアーンによって顔と手以外を隠し近親者以外には目立たないようにしなけらばならなかった。
なお旧暦の終わりごろには、この服装に着目した化粧会社がこの服にUVカット加工を行なった新しい服として服装に寛容で紫外線を気にする女性に爆発的な人気を博した。
しかしコズミック・イラになってから人々が紫外線をコントロールするコロニーに移り住むと徐々に衰退したが地球に移り住んだコーディネーターから再び人気を博した。
 この服装にサオトメも注目したが上層部から規律の乱れの原因として任務中は、着衣禁止の命令が出ていたためこれがサオトメの今できる最大限のもてなしだった。
「それで話って何ですか?」
 アイリス曹長のとげとげしさは、なおあった。
「バラディーヤでのことは、悪かった。
ハワイ基地には、色々と化粧品も売っているらしいからそこでオペレーション・スピリットブレイクが終わったら買い物をしよう」
 アイリス曹長は、サオトメの思いもしなかった発言とデートの誘いにサオトメを見た。
「はい」
 アイリス曹長は、うれしそうに答えた。
「あの時実は、敵ガンダムのパイロットが犯罪者に教われそうになっているのに気づいたんだ」
 アイリス曹長は、サオトメの告白にまた驚愕した。
「やっぱりパイロット同士の決着は、機動兵器で戦ってつけたかった」
 サオトメの理由は、いかにもサオトメらしかった。
「でも少佐は、よくコーディネーターと仲良くできますね」
 アイリス曹長は、ブルーコスモスっぽい発言をした。
「君は、戦前から続くテロがどうして起きるかわかるか?」
 サオトメは、唐突にアイリス曹長に質問した。
「それは、ブルーコスモスの思想がコーディネーターを殺しコーディネーター強硬派の考えがナチュラルを殺す。
そういうことでしょ?」
 アイリス曹長は、いかにも教科書的な答えを言った。
「俺は、人類が地球と宇宙に分かれて住んだからと思う」
 アイリス曹長は、サオトメの理由に再び驚かされた。
「戦争は、まだ全人類が地球にいたころから行われていた。
同じ地球にいたにもかかわらず人類は、戦争をした。
なら宇宙と地球というこれまで予想しなかった距離に分かれて住めばおのずと互いに溝ができる。
それがテロ行為や戦争の根底にある」
 サオトメは、なぜ戦争が起きるかの自論を言った。
「もしも地球再生計画でコーディネーターが作られずナチュラルを送ったとしても同じナチュラル同士で戦争が起きたということですか?」
 アイリス曹長の質問にサオトメは、うなずいた。
「サダウル・オットーが『ニュータイプ論』を説いたときブルーコスモスは、反論した。
それが証拠さ。
人間が他人を信じないと疑う。
疑うから他人を悪いと思い始める。
そしてそれが国家間で起きるから戦争が起きるんだ」
 サオトメの理由にアイリス曹長は、納得した。
「少佐」
 そこに整備員が来た。
しかし整備員は、サオトメとアイリスがいい雰囲気だったので用件を切り出せなかった。
「構わない。
言ってみろ」
 サオトメは、用件を言うように促した。
「ガンダムサイガーの整備で少し気になることがありまして」
 整備員の言葉にサオトメも気になった。
「わかった。
マン・マシーンデッキに行こう」
 サオトメは、整備員とともにマン・マシーンデッキに向かった。
アイリス軍曹は、整備員を恨めしそうに見た。

                                ※

 地球軍のボズゴロフ級潜水艦隊が潜航していた。
この艦隊は、旗艦をクストーとし僚艦をボズゴロフとしている。
クストーの隊長室では、マルコ・モラシム大尉がクルーゼ大佐からの通信をインスタントコーヒーにお湯を注ぎながら聞いていた。
「バルトフェルド大佐戦死の報に私も大変驚いております。
アークエンジェルをアラスカに下ろせなかったのは、モビルスーツ隊隊長である私の失態。
複雑な思いです」
 モラシム大尉は、コーヒーを注いだコップを持つとベッドに腰掛けた。
「アークエンジェルがアラスカに到着した折りには、モビルスーツ隊も解隊されると思われますのでどうかモラシム大尉にもいろいろとお力をお貸しいただきたく思っております」
 モラシム大尉は、画面を殴ってその通信をとめた。
「クルーゼめ、こんな通信を送ってくること自体が下手な挑発だぞ」
 モラシム大尉は、ラウ・ル・クルーゼという人物をあまり快く思っていなかった。
モラシム大尉は、部屋にあった世界地図を見た。
「まあよかろう。
乗ってやろうじゃないか。
その死神をインド洋に沈めてやる」
 モラシム大尉は、挑発に乗った。

                                ※

 ドゴス・ギアのマン・マシーンデッキでは、サオトメがガンダムサイガーの整備を行っていた。
ガンダムサイガーには、水中装備が用意されていなかったのでF型装備のユーピテルのシールドとユーピテル・バズーカを装備したありあわせ装備になっていた。
「最大稼動時にガンダムサイガーにかなり負荷がかかるのか」
 サオトメは、少し困ったように言った。
ALICEの結論から言うとあまり最大稼動は、しないほうがいいということだった。
現在の状態で最大稼動を行うと機体にかなりの負荷がかかるらしい。
今の状態でも機体にそれ相応の負荷がかかっており最大稼動時の負荷は、ガンダムサイガーの許容範囲を超えるらしい。
ALICEが導いた解決策は、サイコミュ装備の搭載だったがサオトメは少佐の自分では実現が厳しいと感じた。

                                ※

 ドゴス・ギアのブリッジでは、対空レーダーが干渉を受けていた。
「レーダーに反応」
 ハリダ軍曹に報告にブリッジ内が騒然とした。
「総員、第二戦闘配備。
機種特定急げ」
 ブライアン艦長が命令した。

                                ※

「総員、第二戦闘配備。
繰り返す、第二戦闘配備」
 パイロットたちは、それを聞いて驚愕した。
「こんなところに敵がいるのかよ?」
 インド洋は、コロニー軍のマドラス基地から目と鼻の位置であるため敵が現れることはめったにない。
η艦隊は、不運だった。

                                ※

 ディンに乗ったモラシム小隊は、肉眼でη艦隊を発見した。
「よし、η艦隊を確認した。
グーン隊、発進準備」
 モラシム大尉は、潜水艦隊に通信を入れた。

                                ※

 クストーとボズゴロフは、そのモラシム大尉の命令でグーンの発進準備を行った。
艦首両舷にある大型ドライチューブからグーン小隊を発進させた。