おれの親友
もう昼まで少しだったから、
おれ達はそのままサンジ達を待つことにした。
サンジとゾロがいつも通り教室に入ってきた。
今日は一体何が原因なのか、喧嘩しながらの登場におれは思わず笑った。
笑ったことに気付きふとおれを振り返ったサンジが顔をしかめた。
まぁ、確かに泣きすぎて目が腫れぼったい。
多少冷やしてはおいたけど、サンジは騙せなかった。
「何かあったのか?」
「聞いてくれよ、さっき空気入れ替えようと窓開けたらよ、虫が両目に・・・」
「うげっっっまぢかよ!!?」
もっとマシな言い訳はなかったかなぁと自嘲する。
これ以上深くは追及されたくなかったから話を弁当に変えた。
ルフィも腹が減ったと叫んだおかげでようやくサンジの視線はおれの目から移された。
それからの昼はいつも通りだった。
泣いたことをひきずる目以外は、思ったよりもすっきりしている。
ルフィの言うとおり、泣きたいときに泣くのは良いことだなと実感した。
「ウソップとサンジは親友なんだな。」
ルフィがどうしてこのタイミングで質問したかは分からなかった。
だけど、おれは素直にその質問に応えた。
「「そうだぞ。」」
応えた声は一つじゃなかった。
思わず顔を合わせると、自然と顔が綻んだ。
「じゃあおれとお前等は何だ?」
「友達。」
即答したのはサンジだった。
それが少し不満だったのかルフィは頬を膨らませた。
「おれも親友がいい!!!!!」
「だーめだ。」
おれはいつもの冗談だと思ったけど、
隣に居たナミはふぅんと意味深に頷いた。
「じゃあサンジ君、私を親友にしてくれる?」
ナミと接するようになってサンジは女子には優しくするようになった。
とくにナミには決して逆らわない。
だからこの質問の答えも決まってると思った。
「すみません、ナミさんのお願いでもこれは譲れません。」
「え?」
驚きの声を出したのはおれだけで、ナミは満足そうに口角を上げた。
「おれの親友はウソップだけです。」
おれは別に構わなかったんだ。
おれが親友に変わりないなら、それで。
サンジに親友が何人いたって構わなかった・・
「そうね、何かっていうと仲間って感じよね私たち。」
「仲間っっ!!それだっっ!!!!!!!」
それまでふてくされていたルフィが機嫌をもち直した。
「おれたちは仲間だな。」
「あぁ、そうだな。」
「なっウソップ。」
「・・おう、仲間だ!!」
こんなやりとりの間にひたすら食べていたゾロに気付いたルフィが怒りだし、
おかず争奪戦が始まり、ナミの分を死守しようとサンジも参戦した。
おれは隣に居るナミにだけ聞こえるように言った。
「ありがとな。」
「高いわよ。」
「うっ・・」
「でも、まるで恋人のように言ったわね。」
「・・ぇ?」
「見ててじれったくてイライラするけど、気長に応援するわ。」
「・・おれもサンジを応援する。」
「はぁ、全く。私が応援するって言った中にはあんたも入ってるの。
私が応援するからには頑張らないと承知しないわよ?」
「えぇっでも、おれ・・」
「だから気長に応援してあげるって言ってんのよ。」
「ナミ・・」
「好きなのに好きって言わないなんておかしいと思わない?」
「・・・っはは、そうかも。」