おれの親友
「いただきます!!!!!!!」
「あんま味わう必要無いからな。」
「馬鹿っサンジの作った弁当だ・・・ぞ・・・」
一口食べて止まったおれを見てサンジの顔が不安げに俯いたのが片隅で見えた。
「あー・・
残していいか――――「っちょーーうウメエぞ何だこれ!!!????」
サンジが何か言いかけたけど、そんなのは耳に入らなくて、おれは口の中で巻き起こった革命というか、奇跡というか、もうそっちに夢中になっていた。
「ぇ?」
小さいサンジの疑問の声も掻き消すようにおれは感想を言ってはがっついて、言ってはがっついて、あっという間に弁当箱は米粒一粒として残ってなかった。
空っぽの弁当箱を震える手で持って、おれは泣きながら叫んだ。
「おかわりぃっっっっ!!!!!!」
おれに圧倒されていたサンジは弾けるように笑い出した。
「っあはははっっ、ばっかじゃねーの?
給食じゃねぇんだよ、おかわりなんかあっかよ。」
サンジは笑い過ぎて目にたまった涙を片手で拭い、もう片方の手でお腹を抑えたまま、
スッとまだ手を付けていない自分の弁当を差し出した。
「おっおい、これはサンジの。」
「いいよ、今のでおれはお腹いっぱいだアホ。」
「いやいや、流石にそれは悪ぃから、じゃっじゃぁ、半分こしよ?な?」
「っはは、半分は食べたいんだ。」
「あっ後で、なんかパン買ってやる。」
「馬鹿じゃねぇの?そうまでしてこれが食べたいのか?」
「食べたい。」
即答したおれを見て、
一瞬ハトが豆鉄砲食らったみたいな顔をしたけど、すぐにまた噴出した。
「また作ってやるよ。」
「いいのか!!!???」
「あぁ。」
嬉しそうに笑ったサンジの顔におれの脳内でシャッター音がした。
あぁ、まったく本当に写メでも撮れば良かった・・
あーーーーー弁当!!!!
写メ撮るの忘れたぁっっ記念すべき第一回の弁当がぁ・・・
打ちひしがれるおれの目の前で、
自分の取り分を今まさに食べようとしているサンジから弁当を奪い取る。
「あっテメ!!!」
「へへ~ん。」
おれは携帯を取り出して、ぬかりなくホワイトバランスの設定なんかまでして、
シャッターボタンをいざ、と押した。
カシャリと音が鳴った瞬間。
あっ白くて綺麗・・・じゃねぇっ!!???
「ちょっとサンジ君ッッ!!!!??」
「ばーか。」
記念すべき第一回目の弁当の写メはサンジのピースによってほぼ隠れた写真になった。
二人で仲良く一つの弁当を食べているとき、
おれはふと思ったことをそのままサンジに言った。
「本当に美味いなぁ、
なぁコックとか向いてるんじゃねぇか?」
視線を弁当に向けていたおれは返答が無いことを不思議に思って顔を上げた。
するとそこにあったサンジの顔は赤かった。
「・・サンジ?」
「あっ・・」
そのとき、ぶわりとサンジの顔の正面から風が吹き抜けていくような錯覚をした。
一瞬、真っ白だったサンジの周りが虹色にも見えた。
あぁこれだ・・
サンジの色を、
サンジが色を見つけたっ―――――
直感的にそう感じた。
そして、その直感は現実になる。