おれの親友
「サンジッッ!!!!!!」
「んー?」
「よかったのかよっ!?」
「あぁ。」
「おれ何かまずいことしちゃったか?
おれ取り返しのつかないことしちゃったりとか・・」
レストランへの立ち入り禁止のはずのサンジがどうしてあそこに居たのか、
もしかしたら話はまとまってて、おれが掻き回したのかもしれない。
おれのせいで・・・
「おれ・・」
「ありがとう。」
「・・・ぇ?」
「じじいがな、ずっと、今やるべきことをやれって言ってたんだ。
おれはてっきり料理の勉強をしろってことだと思ってた。
だから、時間が惜しくなって我武者羅んなって勉強してた・・・」
「・・違ったのか?」
「あぁ。今やるべきこと。
それはお前と一緒に居ることだなって思った。」
「おっおれと!!??」
「料理の勉強はいつだって出来る。
でも、お前と一緒に高校に行くチャンスは今しかない。
それにおれは生まれ持った才能があるからな、高校に言ったってタイムロスじゃねぇ。」
「お前いきなり自信満々だな・・」
「毎日美味いって言う奴のおかげでな。」
「・・美味ぇんだもん。」
「とにかく。おれはお前と同じ高校を目指す。だから勉強教えろ。」
おれがサンジの夢を遠ざけたのかなって不安は拭えなかった。
でも、それをおれが口にしたらきっと怒るから。おれをナメんなとか言って。
「偉そうだなぁお前・・でも、うん。
おれも一緒の高校行きてぇからな、ウソップ先生が教えてやるよっっ」
ほんのちょっぴり嬉しくて泣いてしまった。
隠してはいたけど、きっとバレバレだったんだろうな。
そして、おれたちの猛勉強の日々が始まった。
サンジはサボっていた分を必死に取り戻して、
おれもサンジに分かりやすいように教えるために勉強した。
もしかしたらもっと上を目指せたんじゃないか?ってぐらい。
ふと何でこんな頑張ってんだろな、なんて考えて、
あぁ一緒の高校に行きたいからだなって、それだけだって思うと、また頑張れた。
中学最後のクリスマス。
おれはお揃いの弁当箱を買った。
買うときはサンジとの高校生活を想像してワクワクして、
レジで包装して下さいって言ったときも、おれは笑顔だった。
だけど、家に帰って思い返してみて、
あれこれちょっと気持ち悪くねぇか?なんて思えてきて、
男同士でお揃いの弁当箱ってセーフなのかアウトなのか分からなくて、一気に不安になった。
別にすごい奇抜なものではないし、ワンポイントにナイフとフォークが交差してるロゴが入ってるぐらいで色は黄色と青だし、並べないとお揃いなんて気づかない・・はずだ。
だからおれは若干嫌な汗をかきつつも、渡すことにしたんだ。勿体ないし。
そしたらおれの不安を吹き飛ばすようにサンジは喜んでくれて、
おれが買う決め手になったロゴを気に入ってくれた。
弁当作るの楽しくなりそうだなって。
そんなサンジにおれは魅入ってた。
目が離せなかった。
サンジが好きだなぁ・・・・
いつもなら全力で否定するのに、
おれはもう否定する理由を見つけられなかったんだ。
好きだった。
ずっと好きだったんだ。
もしかしたら一目惚れだったかもしれない。
サンジが大好きなんだ―――――
「ウソップ?どうかしたか?」
「いやっ何でもねぇ。」
「高校楽しみだな。」
「そうだなっ」
ニッと笑えば、笑い返してくれる。
それだけでおれは満たされる。
おれは幸せだ。
サンジの側に居られる。
それだけでおれは十分幸せだから。
裏切りたくないんだ。
サンジの『親友』を。
ごめんなぁ、おれの可愛い恋心・・
おれはぎゅっと手を握りしめた。