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D.C. ~ダ・カーポ~【同人誌サンプル】

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        ◇  ◇  ◇

 辺り一面が真っ白な霧に覆われ、身体がふわふわと浮いている。
(そっか、これは夢なんだ……)
 曖昧な意識の中で、香穂子は自分をそう納得させた。
 恋に破れ、傷付いた香穂子を慰めるために、リリが見せてくれた、優しい夢だ。
 以前、天羽が自慢の情報網を駆使して、音楽科OBたちのフォトアルバムを借りてきたことがあった。
 学生時代の金澤の写真を見ていたせいで、夢の中の画がやたらと鮮明なのだろう。金澤と一緒にいた黒髪の美少女も、学内コンクールの写真に写っていたような気がする。
(私、先生とキスしちゃったんだ……)
 夢の中の出来事とはいえ、嬉しかった。
 あのときは驚きのあまり何も考えられなかったが、相手が金澤と認識した途端に、恥ずかしさが込み上げてくる。
 同時に、彼を平手でぶってしまったことに対して、軽い罪悪感をおぼえた。
(先生が「付き合ってもいい」って、言ってくれた……)
 学生時代の金澤と交際する――今まで男性と付き合った経験のない香穂子にとっては、想像の範疇を超えていた。
 きっかけは「事故」と呼ぶしかないようなキスだったが、いざ交際を始めれば、恋人同士の甘く楽しいイベントで目白押しに違いない。
 所詮、夢は幻――しかし、それが幸せな夢であればあるほど、目覚めたときが虚しくなる。金澤に振られたという悲しい現実が、香穂子には待ち構えているのだ。
(……?)
 香穂子を取り囲む空間が、ぐにゃりと歪む。
 激しい頭痛と耳鳴りがして、浮遊している意識がさらに混濁してきた。目覚めのときが近い。
(いやっ――! まだ、覚めたくない――)
 祈りの声も虚しく、香穂子の意識は、天上で揺らめく白い光に向かって、急激に浮上していった。