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D.C. ~ダ・カーポ~【同人誌サンプル】

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「はい、香穂子ちゃん」
 美夜が満面の笑みで、ジュースの缶を差し出した。
 香穂子の掌にすっぽりと収まったそれは、缶コーヒーサイズのスチール缶で、表にはレモンと蜂のシンプルなイラストが描かれている。
「……っ」
 よく冷えた缶が掌の熱を奪い去って、香穂子は思わず身震いした。
「……もしかして、嫌いだった? はちみつレモン」
「いえ、嫌いじゃないです。……でも、冷やして飲むのって、珍しくないですか?」
 ハニーレモン系といえば、冬の定番ホットドリンクである。
 そう香穂子が説明すると、美夜は不思議そうに首を傾げた。
「え、そうなの? みんな暑い日に飲んでるわよ。はちみつは身体にいいし、レモンの後味が爽やかだしね」
「そうなんですか……」
 香穂子は解せない表情のまま、缶の蓋に目を落とし、眉間に皺を刻んだ。
 缶は口金が完全に外れる旧式タイプで、滅多に開ける機会のない香穂子には不慣れな代物である。
 ぎこちない手付きでタブを引き上げて、ゆっくりと剥がす。
「……わっ!」
 口金が蓋から剥がれきる瞬間、反動で缶が跳ね上がって、中身が宙に飛び散ってしまった。
「香穂子ちゃん、大丈夫――!?」
「はい、平気です……」
 香穂子は愛想笑いを浮かべると、缶の中身を一口啜る。
 はちみつの独特な甘みと香り、レモンの爽快な風味が口内に広がった。香穂子の知るそれよりも濃厚な味である。
「あっ……これ、美味しいです」
「ふふっ、よかった」
 美夜は柔らかな笑みを零すと、自分の缶を開けた。