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D.C. ~ダ・カーポ~【同人誌サンプル】

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「あなたみたいな人が、星奏にいるなんて……」
 香穂子の胸に深い失望感が広がっていく。
 得意とする楽器や歌で、自身の音楽を自在に表現する音楽科の生徒は、香穂子から見れば、憧れと尊敬の対象だった。
 自分は普通科であるが、彼らと同じ学校に通い、星奏の生徒を名乗れることに対して、ある種の誇りを抱いていただけに受けたショックは計り知れない。
「なんだそれ……?」
 そんな香穂子の心境など知る由もない少年は、疑いの眼差しで彼女を見つめ返すばかりだ。
(え……?)
 香穂子の直感が何かを訴えかける。ふてぶてしい男子生徒の容姿をあらためて見遣れば、妙な既視感に捕らわれた。
(――この一年生、誰かに似てる?)
 だが、どんなに考えてもそれが誰であるのか、答えには結びつかない。これだけの危険人物であれば、天羽の情報網に引っ掛かりそうなものであるが……。
「……ったく、そりゃこっちの台詞だっての」
 左の頬を腫らした男子生徒は、不満そうに鼻を鳴らすと、香穂子に詰め寄った。顎の下から鼻の先へ――彼女の顔を舐めるように凝視する。
「ちょっ……」
「あー、いちいち警戒するなって。もう何もしないからさ」
「しっ……信じられるわけないでしょう」
 半歩――距離を詰められた分だけきっちりと……後退りする香穂子を一瞥して、少年は苦笑いを浮かべた。
「やっぱり知らない顔だな。お前、転入生か?」
 そう言って、柔らかな猫っ毛をかき上げる。
 これまた何処かで見たような仕草だ。張りのある耳障りの良い声にも聞き覚えがあった。

 ――何かがおかしい。
 香穂子の本能が、警鐘を鳴らし続けている。
 最終セレクション後の星奏学院。
 通い慣れたはずの森の広場。
 ちょっと……いや、かなり横柄で軽い、音楽科の一年生。
 この違和感は、何だろう……?