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【かいねこ】モノクロ/カラー

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「どうやら、雨が降ってきたようだね」

ぱたっぱたたっと不規則に響く音に、カイトは顔を上げる。傍らで魔道書を読んでいたいろはは、視線を落としたまま、

「雨の日は、マスターがダンスを教えてくれるの」

と言った。

「へえ。君のご主人様は上手かった?」

大抵の魔道士は、パトロンを見つける為、社交界に顔を出す。ダンスの相手をするのも、重要な営業活動と言えた。
いろはは顔を上げると、微かに微笑みを浮かべる。

「いいえ。二人とも下手で、お互いの足を踏んでばかりだった」
「ふーん」

回想の中の相手に軽い苛立ちを覚え、カイトはいろはの手を取ると、

「さあ、立って。俺が教えてあげる」
「でも、あなたの足を踏んでしまう」
「大丈夫。無理にステップを踏むことはないよ」

そう言って、立ち上がったいろはを抱き締めた。赤く染まった耳元に口を寄せ、そっと囁く。

「雨音に耳を澄ませて。俺のことだけ考えて」

カイトは、腕の中でいろはが小さく頷くのを感じながら、今は余計なことを考えまいと目を閉じた。



「じゃあね、いろは。また明日」

カイトはいろはの手にキスをして、部屋を出ようとした時、そっと袖を引かれる。

「・・・・・・お願いしたら、帰らないでいてくれる?」

今が契約のチャンスだと振り向くが、口から出たのは、

「また明日来るよ。心配しないで」

宥めるように言うと、そっといろはの指を解いた。



雨は上がり、濡れた地面を月明かりが照らしている。
カイトが階段を下りてくると、影がぬらりと盛り上がり、覆い被さってきた。

『どういうつもりだ』
「何がです?」
『何故、契約を交わさない』
「盗み聞きですか。余り趣味がいいとは」

言い終わる前に、カイトは地面に打ち倒される。

「ぐっ!」
『三日待つ。それを過ぎたら、喰われるのはお前ということになる』
「・・・・・・分かりました」

影は月明かりの中に消え、カイトは虚ろな目で塔を見上げた。