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【かいねこ】モノクロ/カラー

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カイトが数日かけて根気強く聞き出した結果、分かったのは、いろはの主人はランファという名の魔道士だということ。抜きんでた実力もなく、研究に生涯を捧げるでもなく、自分の食い扶持を稼ぐのが精一杯の、よくいる平凡な魔道士。その彼が道を外れたのは、恋人との別れが原因のようだ。いろはには詳しい事情が分からないようだが、大方、研究にかまけて相手を疎かにしたか、ランファの将来性のなさを見限ったか、そんなところだろう。恋人の心を取り戻そうとしたか、見返してやろうとしたかは分からないが、彼が選んだのは最悪の手段だった。


魔物と取り引きするだけの技量もないくせに。自分の実力を過大評価しすぎだ。


召還の儀式で呼び出してしまったのが、人を喰らうことに無上の喜びを感じる危険な相手だと、気づくことすら出来なかったのだ。招いた結果は自業自得ともいえる。
魔物の力を借りて作り上げた魔道具をいろはに埋め込み、自身を守ろうとするだけの知恵はあったようだが、その程度で諦める相手ではない。隙を突かれ、契約通り、彼は魔物に喰われた。

だが、その後のことは、魔物にも予測できなかったようだ。

迷信深い村人が、ランファの無惨な遺体を見つけ、祟りだと騒ぎだし、いろはもまた呪いの人形と疑われたのだとか。酷い言いがかりだが、彼らの恐怖を解消する生け贄が必要だったのだろう。
けれど、浄化の術を掛けられたいろはは、最強の鎧を身にまとっているようなものだ。水に沈めようが、火に焼かれようが、いろはに傷一つつけることは出来ない。
とうとう、村人達は古い塔にいろはを閉じこめ、呪いが解けるまで祈りを捧げろと要求したらしい。
カイトは、最初に見た光景を思い出し、外に出す気はさらさらないくせに、と失笑する。

「あの日から、色が分からないの。目の前の景色がモノクロに見えて、きっと私に掛けられた呪いのせいなんだと思う。呪いが解けるまで、私はここにいなければいけないの」

大分しっかり話せるようになったと、カイトは見当違いのことを考えながら、いろはの手を撫でた。

「君に傷がつかないのは、埋め込まれた魔道具の影響だよ。君のご主人様が守ってくれたんだね。大丈夫、いろはには呪いなんか掛けられてないし、俺が君の世界に色を取り戻してあげるよ」

そう言っていろはの頬にキスした時、相手の耳がうっすら赤く染まるのに気づく。


もしかしたら、ゴールが近いのかもな。


そう思い至っても、カイトは少しも喜びを感じなかった。
ランファが見つけられた時、どのような状態だったか、容易に想像できたから。