【かいねこ】モノクロ/カラー
翌日。
「いろは、こっちにおいで」
カイトはいろはの手から魔道書を取り上げると、ランファが好きだった絵本を渡す。
「今日は、俺が読んであげる」
小さな種が繰り広げる冒険をカイトが朗読し、最後のページにたどり着いた。見開きで広がる黄色の花畑を指で示し、
「何色か分かる?」
その問いに、いろははゆっくりと首を振る。
「そう。でも、大丈夫だよ。こういうことは、自然に任せた方がいい」
いろはは、カイトを見上げ、「このお花畑が見たい」と言った。
身じろぎせず、黙ったままのカイトに、いろはは同じ言葉を繰り返す。
「でも・・・・・・でも、まだモノクロにしか見えないよね?」
「うん。それでもいい。このお花畑が見たい」
カイトは、ゆっくりと首を向け、真剣な顔でいろはを見つめた。
「そう・・・・・・この花畑が、見たいんだね?」
「うん」
一瞬の沈黙。だが、カイトは直ぐに笑顔を浮かべ、
「それじゃあ、いろはは俺のものになる?」
「え?」
戸惑ういろはに、カイトはくすくすと笑う。
「交換条件。ほら、ここにも書いてある」
カイトは魔道書を手に取り、ページを開くといろはに向けた。
「魔物と契約する時は、交換条件が基本だから。君の願いを叶えたら、君は俺のものだ」
「カイトは、魔物ではないでしょう」
「俺の主人が魔物だと言ったら?」
いろはは首を傾げ、「分からない」と言う。
「カイトのマスターと契約することになるの? だとしたら、私はカイトのものではなく、カイトのマスターのもの?」
「ああ、いいよ。そういう難しいことは」
カイトは顔の前で手を振ると、いろはを自分に引き寄せた。
「いろはに花畑を見せてあげる。その代わり、俺のものになって」
いろはは驚いたように目を見開いた後、頬を染めて視線を逸らす。
「・・・・・・うん」
小さく頷いたいろはを、カイトは抱き締めた。
「準備があるからね。明日、また来るよ。その時、一緒に行こう」
作品名:【かいねこ】モノクロ/カラー 作家名:シャオ