【かいねこ】モノクロ/カラー
翌朝、いつも通りカイトは姿を現す。手に持った新しい帽子をいろはに被せる。
「さあ、おいで。君の願いを叶えてあげる」
手を取り、立ち上がるよう促した。
「遠くまで行くの?」
「そうでもないよ。大丈夫、心配しないで」
いろはが立ち上がると、カイトはうっかりしていたという様子で、いろはの袖をまくる。
「おっと、いけない。俺といる時は、押さえておこうか。無駄遣いになってしまうからね」
いろはが頷き、魔石の色が完全に褪せるのを見届けてから、カイトはその手を取った。いろはは、扉の前まで来て足を止める。
「・・・・・・外に出てもいいの?」
「いいよ。そんなに心配?」
カイトが手を引くが、いろはは足が竦むのか動こうとしなかった。
「・・・・・・私が外に出たら、カイトに悪いことが起きたりしない?」
「大丈夫。そんなことは起こらないから」
「でも」
「分かった。それじゃあ、こうしよう」
「えっ、きゃあ!」
カイトはいろはを横向きに抱き上げると、額にキスを落とす。
「目を閉じて。俺が連れていくから」
「で、でも、私、重いでしょう?」
「全然。むしろ、いろはが風に飛ばされて、どこかへいきやしないかと心配だよ。あの絵本のようにね」
カイトの言葉に、いろははやっと笑顔を見せた。
「さあ目を閉じて、お姫様。俺が君の願いを叶えてあげる」
いろはが目をつぶるのを見て、カイトは壁に魔法陣を描き出す。青白く輝く幾何学模様の円に、躊躇いなく身を沈めた。
作品名:【かいねこ】モノクロ/カラー 作家名:シャオ