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【かいねこ】モノクロ/カラー

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翌朝、カイトは再びいろはの元へ行く。

「おはよう、いろは。今日も可愛いね」

声を掛けても、いろはは微動だにしなかった。


まあ、そうだろうね。


カイトは肩を竦めると、

「今日はプレゼントを持ってきたよ。気に入ってくれるといいんだけど」

答えを待たずに、いろはの手を取り、指輪をはめる。

「結婚してください」
「・・・・・・・・・・・・」
「なんてね。いろはには、まだ早かったかな」

指にキスすると、手首に巻かれた枷に触れた。

「こんなの、君には似合わないなあ。とっちゃおうか」

詠唱とともに鉄が焼き切れても、いろはは悲鳴すら漏らさない。痛覚が壊れているのかと訝しむが、手枷の下から現れた光景に、得心がいった。
一見、入れ墨のようなそれは、魔道具である腕輪を埋め込まれている為のもの。鈍く光る金属は複雑な文様を描き、その中心に、まるで心臓のような赤い石がはめ込まれていた。


浄化の術が掛けられている、か。
なるほど、魔力の発生源はこれだな。
研究の成果、なんだろうなあ。きっと。


人の手に余るほどの強大な力を欲した結果、命を落とした魔道士と、その業を背負わされた人形。
哀れとも思うが、それよりも我が身が大事だ。

「ていうか、塔に入れないのって自業自得じゃないか」

契約の結果が自分の首を絞めることになるとは、思いもよらなかっただろう。
間の抜けた事態に、カイトは苦笑を漏らす。

「ま、いいや。こんなものないほうが、ずっと綺麗だよ。足も外してあげるね」

スカートの裾を持ち上げ、素足にはまった枷を外した。相手の反応がないのをいいことに、すべすべしたふくらはぎを撫でる。

「この足で歩いてみたいと思わない?」
「・・・・・・・・・・・・」
「駄目かー」

カイトはいろはを抱きしめて、髪にキスしながら囁いた。

「・・・・・・時間を掛けて、お互いのこと知り合っていこうね」



階段を降りたカイトは、夕焼けに染まった空と、今にも崩れ落ちそうな塔を、交互に見上げる。最上階の狭い小部屋に閉じこめられ、外を見ることさえ叶わない彼女に、この景色は届かない。そのことを嘆く心さえ奪われて、生きながらえる意味とは何だろうか。


文字通り、あの子は人形なんだな。


「あ、そうだ。いいこと思いついた」

カイトはパンッと手を合わせて、声を上げた。
人形なら、人形本来の使い方をすればいい。自分の思いつきに心を弾ませ、カイトは足取りも軽く町へと向かった。