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【かいねこ】モノクロ/カラー

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翌日、カイトが絵本を抱えて階段を上ってくると、いろはは魔道書を膝に乗せて、文字を指で追っていた。

「気に入ったの? それとも、他に暇つぶしがないからかな?」

いろはの答えを聞かず、持ってきた絵本を積み上げる。

「いろはは、どんな話が好きかな? お姫様が出てくる話? それとも、冒険をするような?」

カイトが差し出す絵本を、いろははぼんやりと眺めるだけだったが、一冊の本を目にした時、ついと手を伸ばした。

「これがいい?」

カイトの問いに、いろははこくりと頷く。
黄色い花畑が表紙に描かれたその本は、風に飛ばされた花の種が、冒険の末に仲間のいる花畑に辿りつくというもの。
こういうのがいいのかとカイトがためすすがめつしていたら、いろははぽつりと、

「マスターが、持ってた」

と呟いた。

「君のマスターが? マスターがこれを好きだったのかな?」
「そう。マスターが、好きな本」

いろはの反応に、カイトは興奮を覚える。自発的に話せるよう、ゆっくりと問いかけた。

「どんな人だったの、君のマスターは? 優しい人?」
「優しい。いつも本を読んでくれた。でも、あの人がいなくなってから、読んでくれなくなった。私、彼女のこと、好きだったのに」
「え? いろはのマスターは女性?」
「ううん、男の人。女の人を連れてきて、結婚するって言った。でも、いなくなった。それから、マスターは本を読んでくれなくなった」

いろはの目が、ふと伏せられる。

「マスターは本を読んでくれなくて、私はずっと待ってた。でも、マスターもいなくなって。見つかったって、村の人が、見つけたって言って。でも、でも」

震えだしたのを見て、カイトはとっさにいろはを抱き締めた。また心を閉ざされては、元も子もない。

「いいよ、無理に話さなくていいから。怖いことは忘れて、楽しいことだけ考えよう。君のマスターと、女の人と、三人で仲良く暮らしていた頃のことを、もっと話してくれる?」

いろははこくりと頷くと、カイトを見上げる。カイトは目を合わせ、にっこりと笑った。