声(仮面ライダーW SS)
02
自分で言うのも何なのだが。
私はこの街に住む、ごくごく平凡な一般人だと思う。
平日は朝から晩まで働き、家ではテレビをみながらご飯を食べ、適当にダラダラしてようやく床に就く。
週末には友人と遊んだり誰もつかまらなかったら家で映画のDVDをみているような、どこにでもいる小市民。
特定の誰かに恨みをかったことなどないし、何か良くない犯罪に手を染めたこともない。
今日だってこんなに夜遅いのは、たまっていた会社の事務整理に思いのほか手間取ってしまったからだ。
やっとの思いで本日の仕事に決着をつけ、会社から出る。
ぱきぱきっと首を鳴らして携帯で時刻を確認する。
どうやらいつもの帰宅時間を大幅にすぎてしまったようだ。
普段なら人のいる大通りから帰るのだが、それだと電車に確実に乗り遅れてしまう。
なので、少し怖いが近道の裏路地から帰ることにした。
怖いといっても、もう何度も通っている道なので特に不安はなかった。
何てことはない。
このまま歩いて電車に乗り、帰ってシャワーを浴び、毎週楽しみにしているテレビ番組をみながらご飯を食べ、時間になったら寝る。
いつものささやかな日常の繰り返し。
何もないけれど、それでも大切だと胸をはれる、とてもかけがえのない日々。
今日だってそうなるはず。
そうなるはず、だったのだが。
(Anomalocaris!!!)
機械の電子音のような声。
この声を境に、私の人生はくるっと反転した。
作品名:声(仮面ライダーW SS) 作家名:ケイス