声(仮面ライダーW SS)
03
「ハァ、ハァ、ハァ、」
裏路地をがむしゃらに走る。
右に曲がり、左に曲がり、また右に曲がり。
とにかく走る。
止まることは許されない。止まってしまったら、私の全てが終わってしまう。
走りすぎてもう何も感覚がない足。
満足に空気が入ってこない肺。
早鐘のように鼓動を乱打する心臓。
息なんか荒くなりすぎて、まるで盛りのついた犬のようだ。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、」
それらの一切を無視して力の限り走る。
自分は走ることしかできない機械か何かなのだと。
もし走ることを止めてしまったら自分はお払い箱なのだと。
そんなバカなことを必死で自分に言い聞かす。
しかし、その逃走劇は突然に幕を下ろされた。
路地の行き止まり。
分厚いコンクリートの壁が、突如私の前に立ちはだかった。
焦る、焦る、焦る。
出口らしきもの、自分の体をすべりこませそうな窓をさがす。
探す、探す、探す、さがす、さがす、さがす。
しかし何もない。
"■■■■ーーーー!!!"
およそ生き物の鳴き声とは思えない、悲鳴にも似た甲高い声が私の耳に突き刺さる。
「・・・・・・・。」
私はおそるおそる、たっぷり時間をかけて振り返る。
そこには、
"■■■■ーーーー!!!"
正真正銘の、化け物がいた。
作品名:声(仮面ライダーW SS) 作家名:ケイス