声(仮面ライダーW SS)
04
無機質で大きな黒目。
エビやカニのように硬そうな甲羅。
刃物のように鋭い爪と牙。
そんな異形を持ちながら、それは人間のように二足で立っていた。
"■■■■ーーーー!!!"
その不快な声は、私から逃げるための気力と生きるための希望を根こそぎ奪い取っていく。
ぺたん。
あまりの恐怖に腰が抜けてしまった。
私はその場でヘタりこむ。
その怪人はゆっくりと私に歩み寄ってくる。
一歩、また一歩、とそいつは歩を進めてくる。
不意に私と目が合う。
「・・・・・・・。」
ああ、なんだ、と私は思う。
私はここにきて、この怪人になぜ襲われたのかようやく理由が分かったような気がした。
こいつには、理由なんか無いんだ。
ただ、たまたま目についた私を襲ってみただけ。
人が邪魔だという理由で虫を踏み潰すのと同じこと。
自動販売機でジュースを選ぶくらいの気軽さで、こいつは私をターゲットにしたのだ。
"■■■■ーーーー!!!"
もう、ダメだ。
私はきっと、明日の太陽をみることはできない。
―――私の愛した日常は、きっとこの路地裏の袋小路で終わりになる。
作品名:声(仮面ライダーW SS) 作家名:ケイス