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Aに救いの手を_サイレント・キーパー(仮面ライダーW)

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勇敢なる第三の来訪者




「た、探偵さん! 刑事さん!」
その時工場の入り口付近から女性の声が聞こえた。
「だ、大丈夫ですか!? うわっ、ひ、ひどいを怪我してるっ!」
本人は必死で叫んでいるつもりなのだろうが、翔太郎や真倉にとっては小鳥の囀りにしか聞こえない、か細く優しい声。
今回の事件の依頼人、柏木多香子だった。
「柏木さん!? どうしてここへ!?」
翔太郎はびっくりして柏木に問いかける。
その声に柏木は少し肩をビクつかせる。
「あ、亜樹子ちゃんから、ここの場所を聞いたんですっ! その、ト、トモちゃんがいるかもしれないから、えっと、」
オドオドとした様子で柏木はつっかえながら翔太郎の質問に答える。
「まさか、それでここまで来たんですか!? こんな夜道に!? たった一人で!?」
今度は真倉が素っ頓狂な声を上げる。
「ご、ごごごめんなさいごめんなさいっ! あ、あの、でも、私、その、どうしても、その、トモちゃんがいるか確かめたくて、その・・・・・・」
真倉の大声にどんどん声が小さくなる柏木。真倉はそれをみて『やべ、びっくりさせすぎた』と頭を掻く。
しかし翔太郎はそんな真倉のことは気に留めず少しシリアスな顔になり、
「気持ちは分かるけどよ、柏木さん。あんたはここにはいちゃいけない。まだここに智子さんがいるかどうかは分からねぇし、ここが危険な場所ってコトだけは確かなんだ。今ならまだ間に合う。ここから引き返してくれ」
「で、でも、ここには、トモちゃんが、」
「安心してください! 柿崎さんは我々で必ず保護しますから!」
「で、でも・・・・・・」
柏木はそれでも翔太郎たちに着いていこうとする。
本当に友達想いのいい人なんだな、と翔太郎は思わず感心してしまうが、しかしそれとこれとは問題が全く別だ。
(ここはあまりに危険すぎる。やはり柏木さんにはなんとか帰ってもらうしかない―――、)
プルルル。
真倉と柏木が話し合っていると翔太郎のスタッグ・フォンが鳴る。
亜樹子からだった。
「もしもし、どうした?」
『・・・・・・あ、翔太郎くん? ・・・・・・うん、ちょっと気になることがあって電話したんだけど・・・・・・』
歯切れの悪い亜樹子の声。
その声色で翔太郎はある程度のことを悟る。
「・・・・・・捜査の情報か?」
『・・・・・・うん、まぁ・・・・・・』
電話の亜樹子の声は非常に弱々しかった。無理もない、最愛の夫が捜査中に敵にやられて重体なのだから。
しかし、どうやら亜樹子は、その大事な恋人のそばにはおらずに、たった一人で今のこの事件のことについて調べていたらしい。
(何も今、そんな仕事しなくてもいいだろ・・・・・・・)
翔太郎は照井がやられたときのことを思い出しそのやるせなさから頭を掻く。
「・・・・・・おい。そりゃありがてぇけどよ、あんま無理すんな。今は照井のところに」
『ううん、私がやりたいのっ!』
亜樹子は元気良く応えた。
いつもの明るい元気の良さとは違う、どこか切実さと必死さの入り混じった、哀しく歪んだ溌剌さ。
「・・・・・・お前」
『竜くんがこんな状態だからこそ、だよ、翔太郎くん? 夫が倒れたんだから妻である私がしっかりしなくちゃいけないじゃない!』
「・・・・・・」
自分の周りにいる人間のために熱くなれる性格。
翔太郎はその亜樹子の力強い声に、何故か先代の鳴海壮吉の姿を思い出した。
(・・・・・・ったく、全然キャラは違うのにな・・・・・・)
『? 翔太郎くん? どうしたの??』
電話口で、亜樹子はきょとんとする。
翔太郎はその様子が容易くイメージできて少し口元が綻んでしまう。
「いや、なんでもねぇよ。んで、そっちでお前は何つかんだんだ?」
『うん・・・・・・実は、柏木さんなんだけどね』
「? 彼女がどうした?」
『妙なのよ』
「だから何が?」

『柏木さん、別に柿崎智子さんとは仲の良い友達ってわけじゃなさそうなのよ』

「・・・・・・は?」
翔太郎は電話越しの亜樹子のセリフを理解するまで数秒の時間を要した。
何を言っているか分からない。
だって、柏木多香子は今、自らの危険を侵してまで、親友の柿崎智子を救うために単身でこの敵のアジトまで乗り込んで来たんだぞ?
怖さに震えながら犯罪者のアジトに単身で飛び込む。
よほど柿崎智子の身を案じていないと出来ない行動だ。
混乱の渦のなかにいる翔太郎に亜樹子は構わず言葉を続ける。
『柏木さん、柿崎さんが襲われた日に彼女と一緒にファミレスで旅行の計画を立ててた言っていたじゃない? あれ、どうやら嘘みたいなのよ。その日にアルバイトに入っていたウェイトレスの女の子に聞き込みしてみたんだけど、旅行雑誌をめくって調べて行き先を調べていたのは柿崎さんだけで、柏木さんはずっと興味なさそうに外を眺めていただけみたいなのよ』
「お、おい、待てよ、亜樹子。そ、それだけで彼女を疑うなんて、」
『もちろんそれだけじゃないわ』
混乱気味の翔太郎の言葉を遮り亜樹子は言葉を続ける。
『そのウェイトレスの子の話だと、彼女たちがいた間、そのテーブルには険悪なムードが漂っていたみたいなの。といっても終始不機嫌だったのは柏木さんのほうで、柿崎さんはその柏木さんを宥めるために旅行雑誌を見せてあげていたみたいなんだけど』
ね、なんか変でしょ?と亜樹子は説明する。
「・・・・・・」
亜樹子の説明はあくまでのその場の雰囲気のみの説明だ。
それだけの情報では確固たる証言にはなり得ないし、二人の関係性をきちんと説明する証拠にもならない。
(・・・・・・しかし)
しかし、どうも引っ掛かる。
亜樹子の今の話だと、翔太郎が今までイメージしていた柏木多香子と柿崎智子の関係と一致しない。
「・・・・・・」
確かに亜樹子の話だけでは実質的な証拠にはなりえない。柏木が何故そのとき険悪だったのかという理由も不明だ。
(・・・・・・どこかに、嘘がある・・・・・・?)
しかし、翔太郎の疑念をわかせるには、十分な内容だった。
「・・・・・・一つ、確認したいんだが」
翔太郎は真倉と話している『彼女』をみる。
「だから分かってください、柏木さん! 柿崎さんは我々が必ず救出しますから!!」
「でも、わ、私はトモちゃんを!」
真倉の大声にびくびくオドオドしながらもなおも食い下がろうとする柏木。
その姿は友人の安否を本気で心配する一生懸命な人間の姿にしかみえない。
「『彼女』は、今日お前に会いに来たか?」
それをおして、翔太郎は亜樹子に質問をした。
『彼女』の言葉の真偽をはかるための質問。
わいてしまった疑念を解消するための行動。
「・・・・・・」
そのとき、ほんの一瞬ではあったが、真倉と話している柏木の動きがは翔太郎の言葉で一瞬止まる。
「・・・・・・」
無論、人の真偽を暴くことを生業にしている探偵はその挙動を見逃すわけがない。
「・・・・・・うん。・・・・・・そうか。・・・・・・うん、分かったよ、いろいろありがとうな、亜樹子」
翔太郎はそれだけ言うと電話を切る。
「・・・・・・今の、亜樹子さんからだったんですか?」
柏木は感情の読み取れない平坦な声で翔太郎に問う。
「うん? ああ。まぁな」
それに翔太郎は何でもないような調子で答える。