Aに救いの手を_サイレント・キーパー(仮面ライダーW)
その奥の人影
永田、柏木を刃野に任せて二人は奥へ進む。
廃工場の丁度真ん中、第二工場は今度は組立部品をつくるライン工場だった。
各工程ごとにパーツを取り付けたり加工したり出来るように工場の至るところにベルトコンベアが設置されていた。
「はぁ、ホントこの会社手広くやってたんだなぁ・・・・・・」
辺りをきょろきょろ見回しながら真倉は呟く。
「っていうか、ほんとこの会社、何がしたかったんだか・・・・・」
翔太郎は若干呆れた調子で溜め息をつく。
「さっきのパワーショベルが動いたのも驚きだったしな。ここつぶれたのって、十何年も前なんだろう?」
「まぁあの手の機械はある程度メンテナンスすれば何年か放置していても持つ場合があるそうだがな。どっちにしてもあれが少しでも動いてくれたのは奇跡に近い」
「お前が運転できたのもな(笑)」
「一言多いわ!」
適当な会話をしつつ工場内を見回しながら進む二人。
「それよりもここは工場の間取りからいけば建物の中心部だ。もし誘拐された人々が監禁されているとしたら、ここか、あとは奥の事務所と第三工場だと思うんだが・・・・・」
そう言いながら翔太郎はどこか怪しいところはないか注意深く見回す。
(おっと、その前にマッキーを先に気絶させちまおう)
翔太郎は、ここからの戦闘はダブルに変身して行動したほうが吉であると考えていた。
(・・・・・・こいつには悪いが、やっぱり人間のままでドーパントの相手はリスクが大きすぎる)
そーっと真倉の背後にまわり当身を食らわす姿勢を取る陽太郎。
「むっ、おい探偵!」
と。今まさに真倉に当身を食らわそうとしたところで真倉の声に遮られる。
「・・・・・・っ!!」
慌ててジタバタする翔太郎。
「ど、どどどうしました、真倉さん」
「? 何故敬語なのだ、探偵?」
「い、いや、なんでもねぇよ。んで、一体どうした?」
「あそこで今、人影っぽいものが動いたのだ!」
「・・・・・・っ!」
真倉は工場の一角を指差す。
それは第二工場の最奥部。
事務所や第三工場に通じる連絡路付近の物陰だった。
「敵か?」
「いや、分からん。しかし確かに何かがモゾっと動いたのが見えたんだ」
「・・・・・・っ!」
ここはもう何年も放置されている廃工場。
野良の犬猫や何かが住みついていてもおかしくはない。
真倉がみたのもその類の獣かもしれない。
「おい、誰だ! そこにいるんだろう!!」
しかし、翔太郎にそんな楽観的な考えはなかった。
何年も放置された廃工場だろうが、野良の犬猫の出入りが可能な穴だらけの建物だろうが、ここは凶悪犯・サイレント・キーパーのアジト。
こんな邪気にまみれた建物に野生の獣が近づくわけがない。
つまり、真倉のみた動く影は、野生の獣以外の何か。
人間である可能性が高い。
「どうした、出てこないならこっちから行くぜ!?」
威圧するような翔太郎の叫び声。事実出てこなかったらこちらから突撃するつもりだった。
そして、真倉が確かに見たであろう人影の主は、
「た、助けてくれぇ・・・・・・」
弱々しい声で翔太郎たちに助けを懇願した。
「!?」
「??」
翔太郎と真倉は顔を見合わせる。
「や、やめてくれ〜、も、もう二度とここから逃げようなんて考えないよぉ、だから、お願いだから見逃してくれよぉ〜〜〜・・・・・・」
その弱々しい口調の人影は両手を頭にくんで立ち上がってみせた。
男だった。
年は30代前半といったところ。
ヨレヨレの背広を着てネクタイも緩くシャツもはだけており、なんだかもういろいろとボロボロだった。
顔はよほど怖いことをされたのか恐怖心で歪んでいて泣き出す一歩手前といいう感じだった。
「わ、悪かったよぉ〜・・・・・・、ち、ちょっと便所探していたら道に迷っただけなんだってぇ。べ、別にあんたらから逃げるつもりなんかなかったんだよぉ〜〜〜・・・・・・」
そのセリフに翔太郎と真倉は顔を見合わせる。
「誘拐された、」
「被害者だっ!!」
二人は声を併せて叫ぶ。
作品名:Aに救いの手を_サイレント・キーパー(仮面ライダーW) 作家名:ケイス



