Aに救いの手を_サイレント・キーパー(仮面ライダーW)
「理解できましたか? これが我がヴァイパーメモリの能力! 人体を通常の骨格ではなく蛇のような多間接骨格へとコンバート(変換)させる能力! 今の私の体は人間の数百倍の数の間接を有している。―――そしてぇ!」
ひゅん。
桐嶋はレールに体が巻き付いた状態から手足を使わず腹筋と背筋の力を利用してダブルの方向へ『ジャンプ』した。
ダブルと桐嶋の間にはベルトコンベアや組立機械が複雑に乱立されているが、
「シャハハハーーー!!」
しゅるん。しゃらん。しゅるり。
そのどれもが彼にとって障害にはなりえない。
人間の間接では有り得ない方向に手足を曲げ、胴体を引き千切らんばかりに捻りながらも一直線にダブルに突進する。
「ウッシャアアアア!!」
「!!」
とっさに回避するように身構えるダブル。しかし
ズバズバズバッ!
そのスピードに乗った桐嶋の斬戟をかわすには至らなかった。
「ぐ、うう!?」
無数の斬戟を喰らいその場で片膝をつくダブル。
「そして、この多間接の体を鞭のように撓らせることによって常人では繰り出せない変則で高速な斬戟を可能にすることができるのです!」
ダブルとすれ違うように着地した桐嶋はなおも言葉を続ける。
「これこそ私の力! 無敵のヴァイパーメモリ! この力で私は私を拒絶したこの世界を創り直すのです!」
わははは!と勝ち誇り高笑いをする桐嶋。
全てを嘲り、全てを蔑む、この世のあらゆるものを見下した哄笑。
はたしてその笑いは、
「ふぅん。『無敵のヴァイパーメモリ』、ねぇ」
「ふむ。その程度では名落ちかな」
ダブルの平然とした声で突然止められた。
「!?」
驚愕する桐嶋。
それを気にした様子はなく、ダブルは何事もなかったかのように立ち上がる。
「あんたのその能力、確かにその無軌道な動きとそこから繰り出されるスピードのある攻撃は大したもんだ」
「ふむ。もしかしたらサイクロンジョーカーの速度をも凌駕しているかもしれないね」
しかし、とダブルは言葉を区切り、
「この程度の切り傷で、本当に俺たちを倒せると思ったのかい?」
そう言ってダブルは切られた箇所を桐嶋にみせる。
確かにダブルの体には無数の切り傷がはしっている。
しかしそのどれもが浅く、切られているのはダブルの装甲の極浅いところのみ。
ヴァイパーメモリの戦い方や特性からみて、このメモリは回避や素早さに優れたガイアメモリ。
それ故なのか、単純なパワーなどへのパラメータが著しく低い。
それはダブルに付けられた刃物傷をみれば一目瞭然だった。
「こんな攻撃、100回喰らったって立っている自信があるぜ?」
「いや、むしろ100回切られる前に君を倒す自信すらあるよ?」
ダブルは顔の前でちっちっ、と人差し指を振る。
"まだまだ甘いね"
そんな意思表示がみてとれた。
「・・・・・・・そうですか」
桐嶋は静かにナイフを身構える。
「ならば、100回と言わず、1000回でも10000回でも貴方達の体に恐怖を刻み付けるまでです!!」
多間接を活かした高速の突貫攻撃。
「ふん、だからよー、―――100回切られる前に倒すって言ってんだろっ!」
それをダブルは真っ向から受け止めた。
作品名:Aに救いの手を_サイレント・キーパー(仮面ライダーW) 作家名:ケイス



