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あの夏、あの日、僕たちは 2

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 大切な日なのに。永い間待っていた、大事な日だというのに。親友に、自分自身に、強くなった自分を証明しなくてはいけないのに。手に入れた力をやっと解放できるその時が、遂に訪れるというのに。

(頭ん中、謙也くんばっかたい…!)

 初めて会った時から今まで、そして今日この日までも。忍足謙也という少年は、千歳を、十分強くなれたという千歳の自信を、いつだって簡単に打ち砕く。
(怖か……っ)
 千歳千里は、忍足謙也を恐れていた。
 彼がいとも容易く千歳を崩してしまうことが、怖くて仕方がなかった。一度だけ深呼吸をして気持ちを落ち着かせようとするが、吐いた息が震えていた。もう一度深く、胸いっぱいに酸素を吸い込み、肺から思い切り二酸化炭素を吐き出す。
 そうしてゆっくりと目を開けた。

 瞼に力を籠めて瞑っていた眼球に、夏の強すぎる日差しと、ほんの数メートル先の400メートルトラック脇のベンチに、だらしなくもたれかかっている光色の髪は鮮烈なほどに眩しくて、千歳はくらりと眩暈を覚えた。




(あの夏、あの日、焦げ付くような苦味の中に何処か甘さを含んだ、この感情の名を何と呼ぶのか、僕は知らなかった)
(狂おしいまでに心を支配する、憎しみにも似た、感情の名を)