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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 8

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 ガルシア達は風の吹き出す精霊像の口に乗った。かなりの強風で上に一気に吹き上げられるのかと思いきや、予想に反して体はゆっくりと上に上げられていった。さながら不思議な風のリフトといった感じだった。
 やがて瞳の紋様の施された部屋の扉の前で上昇は止まった。
 シバが扉に手を触れると扉はいとも簡単に開いた。シバを先頭にガルシア達は部屋の中へ足を踏み入れた。
「なんだここは!?」
 シンは驚きの声を上げた。
 部屋の外観はそう広いようには見えないのだが、中に入ってみると広い空間がどこまでも広がっていた。辺りは雲の内部のように霧に包まれ、どこまでもそれが続いている。
 別な次元に移動してしまったような、そんな感じがした。
 空中に浮かぶ飛び石の先に大きな石版が見えた。
「行きましょう、足元気をつけて、落ちたらもう二度と戻って来れないわよ」
 シバは臆することなく飛び石を渡った。ガルシア達は慎重に後に続いた。
「兄さん、飛び石が!」
 ガルシアは見やった。自分達が飛び越えた飛び石が一つずつ跡形もなく消滅していった。
「これでは戻れないぞ!」
「おいおい、マジかよ!?」
「騒がないで」
 慌てふためくガルシア達をシバは落ち着けた。
「これはきっと試練よ。これを乗り越える方法はあるはず…」
 言ってシバは目の前にある石版を見た。手形になった窪みのある石版には何やら文字が刻まれている。
――我、風を司る者なり。風の力を操る者よ、我に触れてみよ。さすれば我は汝に真実を見通す力、『イマジン』を授けよう――
――風の力を操る者、これって私よね?――
 シバは念じて石版の窪みにそっと触れた。触れた瞬間シバの体は輝きを放った。
「シバ!?」
 シバの体が石版と共に空中に浮かんでいく、同時に石版から放たれた複数の光の玉がシバの体に集まっていった。
 シバの心に声が響いた。
――風を操る者よ、よくぞ訪れた。『イマジン』を与えん…――
 シバに集まった光の玉が一つになり、眩い輝きを放った。そして全ては終わり、シバは石版と共にゆっくりと降りてきた。
「シバ?」
 ジャスミンは呼びかけた。
『イマジン』
 シバは自らに新しく備わった力を発動した。その瞬間、辺りを包んでいた暗い霧が一瞬にして晴れた。無限の空間に見えた部屋は外観通りの壁や天井に包まれ、至極普通の姿となった。
「霧が晴れた!?」
 ガルシアは驚いた。
「よかった、みんなにも真実が見えるみたいね」
「シバ、一体何をしたんだ?」
 ガルシアは訊ねた。
「何もしてないわ。ただ真実を現しただけ」
 これがこの部屋の本当の姿なのだという。
「真実を現す力、『イマジン』よ」
「イマジン…」
 この『イマジン』のエナジーはラマ寺のハモを始め風のエナジストが得ることのできるエナジーである。ハモから与えられたイワンも使うことができる、しかし、彼は自分にしか真実を現す事はできない。これは半分しかエナジーを受け取ることができなかった事に由来する。
 エナジストが別の者にエナジーを授けるということは自身のエナジーを半分与えるということである。これによりお互いに半減したエナジーしか使えなくなる。故にイワンやハモの『イマジン』は自分にしか真実を映すことはできない。
 対してシバは完全な『イマジン』を手に入れた。これは自分にのみならず全ての人に真実を見せる事ができる。言わば真の『イマジン』である。
「さあ、行きましょう」
 真実を現した普通の姿となった部屋から出るのは簡単な事だった。部屋の出入り口に近付くとシバはエナジーを解除した。一瞬で部屋は再び霧に包まれ、無限の空間が広がった。
    ※※※
 ガルシア達が遺跡を出て岩山を下りると辺りはすっかり暮れてしまっていた。エアーズロックの周りの砂漠を越える頃にはすっかり夜になってしまった。
 今夜はここで野宿かと考えていたら遠くの高台から明かりが見えた。人のいる集落があったのだ。それはこちらからそう遠くはなく、少し歩くとその集落の麓へたどり着いた。
「うえ〜、まだ登るの?」
 ジャスミンは嫌そうに肩を落とした。高台の集落まで行くのには更に妙なまでに険しい道を行かなければならなかった。
「全く、こんな所に住んでる奴らの気が知れないぜ…」
 シンも不平を洩らした。
「もう少しだ、頑張って登ろう」
 ガルシアは二人を励ました。
「お前は元気でいいな…」
 ガルシア達は登り始めた。険しいだけならばまだしも、その道は妙だった。
 まるで外部からの侵入者を防ぐかのように不自然にバリケードのように岩で道が塞がれていた。『ムーブ』
 邪魔な岩はガルシアのエナジーで動かした。その向こうで今度はは穴が空いていたりとひたすらこの道は進みにくかった。
 そんな中どうにも気になるものがあった。岩壁に刻まれた絵である。
 人と動物らしき絵である。人が動物を追いかけている、狩猟の絵であろうか、それにしては妙である。絵の人が手にするものは槍というよりも火の付いた松明のようだった。まるで動物達は追い散らされているような、そんな絵だった。
 やがて高台に登りつめ、ガルシア達は集落の入り口にさしかかった。側の泉には今宵の月が映し出されている、満月だ。
「綺麗な月だな」
 ガルシアは空を見やった。
「そういえば…」
 シンは何か思い出した。
「どうしたの、シン?」
 ジャスミンは訊ねた。
「月で思い出した事があるんだ…」
 シンは語り出した。
 その昔月夜に獣人化する者がいたという。かつては人とともに生きてきたのだが、ある時を境に人はその者達を忌むようになった。不意に満月の光を浴び、人の前で獣人化してしまったのである。人はその姿を恐れおののいた。それほどまでにおぞましい姿をしていたのだ。
 ついにその者達は迫害を受けることになった。住処を追われ、山奥へ追いやられそこへ隠れ住むようになった。その民を人はこう呼んだ。『ヴァンパイア』と
「まあ、あくまで聞いた話なんだけどな」
「ヴァンパイアについてならワシも少し知っておるぞ。その生き血を飲むと不老長寿になるとか」
 スクレータは言った。
「それならオレも聞いたことがあるぜ。だから昔その血を狙ってヴァンパイアは襲われた事があるって。でもこればっかりは大嘘だろ」
 この話が本当だったとしたらトレビのバビはレムリアなど探さずにヴァンパイアを探していたことだろう。しかし、そのような事はしていないしバビ程の権力者にこの話が届いていないのが妙である。不老長寿の生き血云々は噂に尾鰭が付いただけであろう。
「大体本当にヴァンパイアなんているのかどうかだって分かってねえんだ。人づてに噂が広まってるだけなのかもしれないしな」
「何にしても気の毒な話だな」
 ガルシアは聞いていて同情した。
「まあ、気にすんなよ。ただの噂、伝説だよ。さあ、こんな所でいつまでもくっちゃべってないでさっさと村に入…」
「ウォオーン!」
 シンの言葉を獣の鳴き声が遮った。
「おい、ガルシア変な悪ふざけは止めろよ」
「違う、俺じゃない」
 再び鳴き声が響いた。
「あそこ!」
 ジャスミンは指差した。その先には何かの影が見えた。
「隠れるんだ!」