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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 8

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 ガルシア達は上手く寺の内部へ侵入すると、そこでは長年修行を積んだらしい僧達がカンドラ寺の主、ピポイにその力を見せていた。
 僧達はエナジーのような力を発揮する事で空中に浮かんで見せた。二人の僧が浮かぶとすぐに落ちたのに対し、一人の僧が空中に浮かぶだけでなく静止までしてみせた。
 味を占めた僧はピポイに奥義の修行をさせてもらうよう頼んだ。ピポイは最後まで不本意な様子だったが、なかなか引き下がらない僧に負け、修行を許可した。
 修行の洞窟の扉が開かれると、ガルシア達もこっそりと後について行った。それからしばらく進んだ後、道の半分も行かないであろうというところで僧が倒れ気絶していた。
 あれほど修行を積んでいた僧があっさりと脱落している。それほど厳しい修行なのだろうかとガルシアは改めて思うのだった。
「ずいぶん険しい洞窟ね…」
 シバは言った。
 これまで様々な仕掛けを解いてきた。間欠泉の噴き出す壁をエナジーで岩を動かして塞いだり水の流れに逆らって向こう岸へ渡ったりもした。
 そのおかげで靴の中がぐしょぐしょに濡れて気持ちが悪い。靴のままで渡ったガルシアも悪いのだが。
「まだまだ先は長そうだ。慎重に行こう」
 ガルシア達は進んでいく、そのうちに断崖に差しかかった。向こう側に道がある、しかし断崖を繋ぐ橋はない。橋は無いが、代わりに驚くべき物が道を繋いでいた。
「まさかこれを渡れと言うんか!?」
 スクレータは驚いた。断崖を繋ぐ物はなんと一本の綱だった。距離は大体十五メートル弱だが綱の下は暗闇が広がっている。落ちたらどうなるか分かったものではない。
「仕方ない、この他に道は無いんだ。渡るしかない」
 ガルシアは綱に足を掛けた。
「ちょっと兄さん、止めて、危ないわ」
「そうじゃ、落ちたらどうなるか…、別の道を探すんじゃ」
 ジャスミン達の止めるのも聞かずにガルシアは両足を綱に掛けた。
 ガルシアは両手でバランスを取りつつ一歩一歩慎重に踏み出していった。
 ガルシアが一歩踏み出す度に綱が大きく揺れる。見ているジャスミン達の方が恐ろしかった。
 当の本人は最初の数歩は若干恐怖を感じたが、半分進む頃には感覚を掴み、まるで普通の道を歩くかのように渡りきった。
「意外と慣れれば大丈夫だ。渡ってみろ」
 ガルシアは断崖の向こう側から言った。
「じゃあ、私が行くわ」
 今度はシバが綱に乗った。
「シバ、危ないわよ!?」
「大丈夫、私実は綱渡りって得意なのよ」
 シバは笑って見せると綱の上を難なく進んでいった。途中止まる事もなくすいすい渡りきってしまった。
「ほら、大丈夫よ。ジャスミン達も早く来なさいよ!」
 シバは叫んだ。
「そ、そんなこと言ったって…」
 何故そこまで抵抗なく渡れるのか、ジャスミンには理解できなかった。
「そんなに怖かったら這っていったらどうだ?」
「嫌よそんな恥ずかしい格好!」
 ジャスミンの肩にスクレータが手を乗せた。
「ジャスミン、ワシゃ決めたぞい。ワシは這ってでも行こう」
「ちょっとスクレータ!」
 スクレータは綱の上を腹這いになり、手と足を駆使してゆっくり前に進んでいった。その姿は蝶の幼虫が枝の上を移動するような、なんともおかしなものだった。
 スクレータは何とか渡りきり、地面に飛び付いた。
「ふぅ、生きた心地がしなかったわい…」
 スクレータの顔は冷や汗でぐしょぐしょになっていた。
 スクレータが渡った事により、残るはジャスミンのみとなった。
「ちょっと、ジャスミン早く来なさいよ!」
 シバは急かした。
「みんなどうして行けるのよ…」
 ジャスミンは綱の上に足を掛けては離しを繰り返している。綱渡りする勇気も這っていって醜態を晒す勇気もなかった。特に這っていくのだけは絶対に嫌だった。
「だったらそこで待ってるか?俺達は先へ進むが…」
「そうね、それがいいわガルシア」
 時間の無駄だとシバは賛成した。スクレータも同じだった
「それじゃ俺達は先へ進もう。ジャスミンはそこで待っててくれ、後からまた戻る」
 ガルシア達はジャスミンに背を向けて歩き出した。
「わ、分かったわよ!今行くから待っててよ!」
 ガルシア達は立ち止まってジャスミンを見た。 ジャスミンはしゃがんで綱を掴むように持った。
「…あんまり見ないでよ」
 ガルシア達はそれぞれそっぽを向いた。
 ジャスミンは這って綱の上を行った。目を開けていると下に広がる暗闇がどうしても入ってしまうので、目を閉じて進んだ。
 スクレータの言っていた意味がよく分かった。生きた心地がないどころか、寿命が削られていくような気がした。手を前に出すごとに綱が揺れて、その度に綱にしがみ付いてしまった。どれほど滑稽な姿をしているか、考える余裕などなかった。
 やがて渡りきることができた。ジャスミンはスクレータと同じように地面に飛び付いた。
「はあ、はあ…、怖かった…」
 ジャスミンは徐にガルシア達を見ると皆笑いを堪えていた。そんなに変な姿だったのか、いや、それ以上に見ないように頼んだのに笑っているのは見ていたという証拠に他ならない。
「ひどい、見ないでって言ったのに見てたのね!」
「いや、すまん。ジャスミンが心配だったから…」
 言い終わらない内にガルシアはゲラゲラ笑い出した。
「だってジャスミンあんなに綱にぴったりくっついてるんだもん、そりゃ見ちゃうわよ」
 シバは笑いながら言った。
 三人はしばらく笑い転げた。
「みんな大嫌い!」
 それからジャスミンの機嫌が直るのに時間がかかったという。
 ガルシア達は更に奥へ進んだ。そろそろ最深部に差しかかったかと思われる所に、煮え立った大釜が行く手を塞ぎ、その傍らには立て札が立っていた。
「『心頭滅却すれば火もまた涼し、無念無想に達すれば煮えたぎる釜も持てるはず。ピポイ』だって、むちゃな事言うわねえ」
 シバは立て札を読んだ。
「いや、ひょっとしたら無念無想に達しなければ奥義は使えないのかもしれん…」
 ガルシアは大釜の前に立った。
「兄さん、あんなのに触ったら火傷するわ!」
「大丈夫、素手で触らなければ火傷はしない」
 ガルシアは日頃から手袋を着けていた。
「それに集中すればきっと…」
 ガルシアは目を閉じ、エナジーを使うときのように集中した。同時に釜は熱くないと自分に暗示をかけた。
 精神が一番集中したと思った所でガルシアは両手で大釜に触れた。じゅう、という音を立てて熱は瞬く間に伝わった。
「……………っ!!」
 ガルシアは声にならない叫びを上げた。次第に叫びは声になり、熱い!と連呼した。
「当たり前じゃない、あんなのに触ったら誰でも熱いわよ…」
 シバは呆れ果てていた。
「兄さん大丈夫…?」
 ジャスミンは心配する素振りを見せつつ、熱さのあまり手を振り回すガルシアを見てお返しだとばかりに笑っていた。
「ガルシア、やはりここはエナジーを使った方が良いのではないか?」
 スクレータに諭されてガルシアは恥ずかしくなった。考えたら無念無想の境地というほど集中する事がエナジーだったと気付いた。
『ムーブ』
 ガルシアはやけっぱちにエナジーを発動して釜を横にずらした。